だがその一方で、彼女が逮捕前に出演していたYouTubeでは「18歳で家を出てからは家族と一切連絡を取っていない」ことや、「父親のDV」についてもチラリと明かしており、歌舞伎町に来るまでのことについては「記憶から抹消したい」とも語っていた。動画での渡邊被告はその独特のキャラクターとも相まって、話した内容のほとんどが「ネタでは?」とも見られていたが、実際のところはどうだったのだろうか。

 改めて、話を聞きたい旨を伝えると「え? 私の生い立ちが聞きたいんですか?」と言って、逡巡することもなくごく普通に笑顔で話し始めた。

りりちゃんの父親

 1998年、神奈川県平塚市で生まれ、父と母、1歳年上の姉との4人暮らし。ペットの黒いチワワを可愛がっていたという。

ADVERTISEMENT

 姉については「姉っぽい人」と呼び、「そんなに仲は良くなかった」と話し、「お母さんは面会に来てくれましたけど、姉っぽい人はないです」と続ける。

 よどみなく話す渡邊被告の様子が変わったのは、私が「お父さんはこちらには来たんですか?」と質問した時だ。とたんにガラリと表情を変え、こう言うのだ。

「お父さん……父親……父……そういう言葉も使いたくもない。“あの人”が面会に来たいと言っても絶対に会う気はありません。申し込みがあっても絶対に断る。今さら『許される』と思わないでほしい」――。これまでのホストや歌舞伎町について話す様子とはまったく違う、聞いたこちらが思わずたじろぐような強い調子だった。

「“あの人”はDVの常習だった。でも、お母さんや姉には向かわず、ひどい目に遭うのは犬と私だけ。何でなんでしょう? 未だにわからない。犬を高いところに乗せて、降りられなくなってキャンキャン吠えて怯えているところを笑って見ていたり、怖かった」

 渡邊被告はうつむきながら、当時のことを思い出しているのか、ひとことひとこと、絞り出すように話す。父親が何の仕事をしていたのかも知らない。ただ、朝に家を出ていき、夜になると帰宅するので、「どこかしらで働いているのだろうと思っていた」と言う。

 父親からの暴力は次第にエスカレートしていったと渡邊被告は話す。決定的な“事件”が起きたのは渡邊被告が中学生の頃だ。

写真はイメージ ©getty

「その頃になると、父は夜になると包丁を持って私の部屋に来るようになったんです。当時、母はファミレスとかの夜勤で家にいなかった。本当にそれが嫌で、私は夜になると包丁を隠していて。ある日、父親がそのことに激怒して。私は部屋に鍵をかけて、犬と隠れていたんですが、部屋の鍵を壊して入ってきて。『お前、包丁を隠しただろう。今から買って来るからな』と言って部屋を出ていった。もう本当に殺される、死ぬ、と思って意を決して、一大決心をして、警察に電話をして『助けてください! 父親に殺されます!』って状況を説明したんです。

 警察は来てくれたんですけど、事前に父が手を回していたんですね。私がウソをついている、というように捉えられていて、助けてもらえなかったんです。私は、これで父が逮捕されて、ようやく怖い思いをしない生活ができるのでは……と思っていたから……警察にも裏切られたというか……」