「自分の半生は、あまりにも暗いと思った」と絶望…青葉が語った犯行直前の胸中
「自分のような悪党でも、小さな良心がどこかにあって、それが正しいことなのか、考える部分はある」。青葉は、自らの良心の呵責を公判でこう表現した。
一方で、チームで作るアニメだからこそ、自らの小説をパクった責任は社員の誰にでも同じようにある、と正当化した。
第6回公判、犯行直前の胸中を巡る問答に、青葉の絶望がにじみ出ていた。
検察官 自分の半生はどうだった、と考えていたのか。
青葉 京アニは光の階段を上っているように思えた。自分の半生は、もう、あまりにも暗いと思った。
検察官 (犯行に)迷いはなかったのか。
青葉 やはりためらうものです。(しかし)やはり、どうしても暗いと考えて。それで、やっぱりここまできたら、やろうと思った。
本当に火を放つのか、とどまるべきか──。葛藤する男の中で、最後の最後に頭をもたげたのは、あの「光と影のコントラスト」だった。そして、「京アニなんか、なくなってしまえ」と決意を固めた。
「パクりまくったからだよ。小説」
青葉は、第1スタジオの1階のドアが開いているか確認すると、台車に戻った。ガソリンを入れたバケツを手に持ち、ポケットにガスライターを入れ、憧れた京アニのスタジオに侵入した。バケツを持ち上げ、ガソリンをまき散らした。液体は1階フロアで働く一部の従業員の体もぬらした。
12人が1階で働いていたが、目に飛び込んできたのは2~3人。ポケットからガスライターを取り出し、目の前の従業員に向け、火をつけた。
次の瞬間、一気に炎が立ち上がり、黒煙が噴き出す。慌てた青葉は、玄関に向けて走り去る女性に気付く。自身の腕に火がつき、すぐに外に逃げ出した。スタジオを出るときには足にも火が回り、転がるように外に出た。ほかの従業員もスタジオを出てすぐのところでうずくまっていた。
青葉は数十メートル先の民家前の路上で倒れ込んだ。
「なんでやった」「頑張って言え」。駆けつけた警察官が、必死の形相で矢継ぎ早に問いかけてきた。
遠のく意識の中で、青葉が吐き出したのは怨恨の言葉だった。
「パクりまくったからだよ。小説」
病院のベッドの上で目を覚ましたのは、約1ヵ月後だった。
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