※こちらは公募企画「文春野球フレッシュオールスター2025」に届いた原稿のなかから出場権を獲得したコラムです。おもしろいと思ったら文末のHITボタンを押してください。

【出場者プロフィール】とく 東京ヤクルトスワローズ

大の荒木貴裕ファンであり、「小澤怜史の名物うなぎ丼」を愛する、アビラ世代のメーカー広報部勤務。4年連続本選進出となった今回こそ優勝して傘の花を咲かせたい。好きな「25」は館山昌平とサンタナと清竜人。

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「もぎっ! もぎっ! 茂木栄五郎!」

 中継を見ながら、パ・リーグ党であるはずの妻がノリノリで腕を振っている。実家に帰れば、テレビの前で母がエクササイズ感覚で腕を振っている。神宮に轟く声援の中で、大の茂木ファンである友人がキラキラした眼で腕を振っている。

 今季から活躍の場を神宮の杜へと移した、東京ヤクルトスワローズ・茂木栄五郎。その実績と人気と同様に話題に上るのが、応援時の専用コール「もぎっ! もぎっ! 茂木栄五郎!」ではないだろうか。

 どこか耳馴染みのあるリズムに、両腕を交互に振る振り付けは、ファンのハートを掴んで離さず、楽天・ヤクルト両応援団の粋な計らいの下、移籍後も継続して使用されている。交流戦では相手チームのファンが思わず茂木を応援してしまうなんて一幕もあったほどである。

 そんな「もぎもぎコール」について、実は茂木が様々な発言をしていることをご存じだろうか。

 ある時は「(打席で)めちゃくちゃ聞こえてます!」「いつも通りいられる」と答える一方、別の機会では「最初はなんて雑な応援だと思いました」「正直あんまり……(笑)」と話しているのである。

 イーグルスファン曰く「茂木はブラック栄五郎とホワイト栄五郎の両面がある」らしく、ウィットに富んだ茂木らしい“イジリ”だとは思うのだが、これだけ楽しませてもらっている「もぎもぎコール」、どうにか茂木の後押しになっていてほしい。

 我々の「もぎもぎコール」は茂木の“力”になれているのだろうか。「もぎもぎコール」はどんな影響を与えているのかが気になり、思い立って茂木の全打席と「もぎもぎコール」について調べてみることにした。

ヤクルト・茂木栄五郎 ©時事通信社

そもそも茂木栄五郎は何回自分の名前を呼ばれているのだろうか

 検証にあたっては、各種配信サービス(FOD・GiantsTV・虎テレ・J SPORTS オンデマンド・パーソル パ・リーグTV)に加入。執筆時点(6月24日現在)までに、茂木が出場した今季の一軍公式戦における全打席を見直し、その1球1球および打席結果、その後ろで流れる「もぎもぎコール」を計測した。

 茂木の打席を現地や中継で見ては、配信で過去の試合を見直す生活を続け、いよいよ夢の中でもあのコールが流れるぐらいには茂木と向き合い、以下の結果を得ることができた。

【疑問(1):燕党は今季、何回「もぎもぎコール」しているのか?】

 まず、今季茂木が執筆時点までに出場した49試合で「もぎもぎコール」が一度も流れなかった試合はなんと、1試合もなかった。

 当たり前と思うかもしれないが、得点圏の打席で最初からチャンステーマが流れ続けている(≒「もぎもぎコール」が流れる余地がない)打席も多数あった中であり、応援団も積極的に発動し、茂木と球場を盛り上げようとしている様子がうかがえる。

 そしてその総量、茂木の打席にて「もぎもぎコール」が発動した回数と時間は、手元の計測で以下の通りであった。

ホーム  83打席中66打席で発動  計509回 1807秒
ビジター 83打席中61打席で発動  計566回 1947秒
合計 166打席中127打席で発動 計1075回 3754秒(62分34秒)

 今季の茂木の打席では平均約76.5%(166打席中127打席)の確率で最低1回はコールが発動し、1打席あたり平均8.46回(127打席1075回)ほど「もぎっ! もぎっ! 茂木栄五郎!」が鳴り響いていた。新天地でのサブリミナル茂木効果は既に抜群である。

 茂木は今季だけでも合計約1時間も自身の名前を背に受けて戦っていることになる。このコールはプロ1年目の途中から始まったため、キャリア全打席が対象とはならないものの、計測時点で通算3303打席立っていることを考えると、ペース的には少なくとも2万1000回以上は名前を呼ばれている計算であり、鷲党・燕党はもはや自分の名前より茂木の名前の方が人生で発している回数は多いかもしれない。