フジ・メディア・ホールディングスや東京ガスにも

 企業内ガバナンスが不適切であるとされ経営不振に陥っているフジ・メディア・ホールディングスに対しても、米国系アクティビストであるダルトン・インベストメンツが総資産の35%にあたる5100億円の価値があるとされる不動産事業をスピンオフさせるべきとの株主提案を行った。総会でこの提案は否決されたが、ダルトン側は不動産事業のスピンオフについては引き続き主張していくとして、臨時株主総会開催の提案も模索しているとされる。

 東京ガスに対しても、米国系のエリオット・インベストメント・マネジメントが不動産ポートフォリオの見直しを求めている。東京ガスの不動産は含み益だけでも4000億円程度になるとの試算もあり、アクティビストたちはこうした含み益を実現し、本業投資や配当にまわすよう求めているのである。

彼らの主張は「都心不動産の効率の悪い運用」

 アクティビストの狙いは日本の大企業の非効率な経営の元凶として、取引先や関係会社との間で保有しあう政策保有株式の売却や、本業とは何ら関係のない不動産事業の切り離しだとされる。また最近では、保有不動産における余剰容積率の活用を促し、収益性を向上させるように要求される企業もあるという。

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 大企業などが保有する都心不動産の多くは、賃料収入も多額で、一見すると収益性が高いと思われがちだが、長年にわたり保有し続けてきた土地が多く、現在の土地価格に合わせたキャップレートで考えれば3%程度にすぎない。現在の株主が求める資本効率はおおむね8%程度とされる中で、あまりに効率の悪い運用をしているというのが彼らの主張なのである。

 これに対して、不動産運用を行うことは本業ではないものの、得られる安定収益のおかげで、安心して本業に勤しむことができるという反論もある。ただこれは詭弁といえるだろう。本来実現できるはずの大きな利益を本業への投資や株主に還元せず、自分たちがあまり努力せずに働いても給料がもらえるようにしている甘えた構造については、経営の怠慢として指摘されてしかるべきだろう。