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「こんなに頑張ってるのに給料が上がらないのはおかしい。パワハラだ!」 蔓延する“相対評価”、“内申書重視”はなぜ日本をダメにしたのか

2021/10/05

 都内の私立大学に勤める、知り合いの教授からこんな話を聞いた。

「最近は、学内で試験をしても、正しい成績をつけられなくて困っているんですよ」

 この教授は、経済学を教えているのだが、ある学生に試験で低い成績をつけたところ、大変な目にあったという。

学生の親まで出てきて「成績あげろ」

 学生は、目を真っ赤にして教授の研究室にやってきて、なんでこんなひどい成績なんだと猛抗議してきたのだ。そこで、なぜ成績が悪かったのか、どこの点で劣っていたのかを丁寧に説明したのだが、全く納得してくれない。

 自分は一生懸命がんばった。がんばったのに先生はそこを一切考慮せずに評価する。これは差別だ、納得がいかない、と。

©️iStock.com

 一生懸命がんばったかもしれないが、結果として君の答案は的外れで、理解が不足している。違う内容の試験だったら、たしかに君が勉強したはずの分野についてよい成績がとれたのかもしれないが、今回は残念だったね、と諭しても、学生は自分の努力は正当に評価されてしかるべきだと主張を曲げない。

 その日は他に大事な会合があったのでなんとかその場を引き取ってもらったのだが、翌週彼は、大学の学生課に呼び出された。くだんの学生の親が事務局にやってきて、猛抗議しているのだという。

 曰く、「こんな成績をつけられたのでは就職に響く。この教授は評価が低かったというが、本当は教え方が悪いのではないか。そのことを棚に上げて、恣意的に評価している。そんな教授は辞めさせるべきだ」

大学までが「面倒ですから成績を変えてあげたら」

 自分はきちんと評価をしている、学生によって恣意的に評価することもない、と大学側に説明をしたのだが、大学側も

「先生、それはもうわかっているのですが、親御さんからは、じゃ本当にその教授の評価の仕方が正しいのか大学側から証拠を出せ、と言われていまして。もう先生、面倒ですから成績を良い評価に変えてあげたらいかがですか」

 と言われる始末。

 頭に血が上った教授は、そんなことはおかしい。それこそ差別だ。学生からの要請で成績の内容を変えるなどナンセンスだ、と訴えたのだが、大学側は

「もういいじゃないですか。うちの大学の学生、もともとそんな成績の良い子が多いわけじゃない。適当に良い成績をつけて進学、卒業させればよいのですよ。そのほうが良い企業に就職できる可能性も高まります。だいいち、成績わるくつけて、留年なんかになったら、また親たちまでが大挙してやってきて大騒ぎになる。先生、ここのところはひとつ、お気持ちはわかりますが、よろしくです」

 と完全なあきらめモードだ。