「撮影では本物のウジ虫も食べました」

——本物のガジュマルの上で撮影されたとか。

 はい、撮影の8割くらいは、堤さんと木の上にいました。大変だと思われるかもしれませんが、ずっと木の上にいると感覚が鈍ってくるんです。実は僕、本当は虫が苦手で、触るどころか見るのもダメでしたが、だんだん気にならなくなりました。途中からはハエが顔にとまっても平気でしたし、撮影では本物のウジ虫も食べました。

——脚の傷口にわいてくるウジ虫を食べるシーンですね。

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 安慶名の気持ちが切り替わる重要なシーンなので、ニセモノでごまかすことに違和感があったんです。撮影直前に監督に「やっぱり(本物の虫を)食べます」と伝えたところ、監督と助監督が「じゃあ、俺らが先に試すから」と食べてくださって……。でも完成した試写を観たら、「本当に食べているの?」というくらいわからなかったんですよ。こんなことなら食べなきゃよかった、と思いました(笑)。

©︎2025「木の上の軍隊」製作委員会

——堤さんとご一緒のシーンで、印象的なエピソードなどがあれば教えてください。

 山下がエロ本を見つけて得意顔になるシーンがありますよね。そのときの堤さんの顔が本当に面白くて、うっかり笑ってしまったのですが、それこそが彼らのリアルだったのかもしれないと想像しました。

——本作は戦争を主題にしながらも、上官と新兵の2人が、人としての絆を強めていく物語だと感じました。

 はい。監督もおっしゃっていますが、この作品は僕らにとって戦争の悲惨さを訴える映画というだけではなく、過酷な状況下で2人ががんばって生き抜くという、人間の絆と尊厳を問いかける話だと思っています。ぜひ2人のがんばりを観に来てください。

 

写真 杉山拓也
小林純子=ヘアメイク
森田晃嘉=スタイリング

やまだ・ゆうき 1990年生まれ。『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11~12年/テレビ朝日系)で俳優デビュー以降「HiGH&LOW」シリーズ(16~19年)、『あの頃、君を追いかけた』(18年)、「東京リベンジャーズ」シリーズ(21~23年)、『燃えよ剣』(21年)、『余命10年』(22年)などの話題作に出演、22年にエランドール賞新人賞、24年には第47回日本アカデミー賞話題賞を受賞。今後『ベートーヴェン捏造』(9月12日公開予定)、『爆弾』(10月31日公開予定)の出演作が控える。

INTRODUCTION
1945年沖縄県伊江島。日本の敗戦を知らぬまま2年もの間ガジュマルの樹上で生き延びた2人の日本兵の実話を基に描かれた、作家・井上ひさし原案の伝説の舞台を映画化。オール沖縄ロケで作品に参加した堤真一・山田裕貴が、実際にガジュマルの樹上に登って撮影。クレーンを使った多彩なアングルでの撮影は臨場感あふれる。監督と脚本を沖縄県出身の平一紘が手がけ、こまつ座からも井上の娘である井上麻矢がプロデューサーとして参加している。

STORY
太平洋戦争末期、戦況が悪化の一途をたどる1945年。飛行場の占領を狙い、沖縄県伊江島に米軍が侵攻、日米両軍による激しい攻防が展開された。伊江島出身の新兵・安慶名セイジュン(山田裕貴)は、仲間を次々と殺され、本土から派遣された上官・山下一雄(堤真一)と命からがら大きなガジュマルの樹上に身を潜めることに。援軍を待ちながら、恐怖と飢えを耐え忍ぶ2人だったが、ある日、米軍が捨てた食料や物資を発見し、生活が一変する。極限状況のなかで彼らを待ち受けていたのは──。

STAFF & CAST
監督・脚本:平一紘/原作:「木の上の軍隊」(株式会社こまつ座・原案:井上ひさし)/出演:堤真一、山田裕貴/2025年/日本/128分/配給:ハピネットファントム・スタジオ/©︎2025「木の上の軍隊」製作委員会
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