まだ息のあるAさんの左手首とダンベルを手錠で結束し…

〈Bらの死体遺棄及びAの殺害状況等

 被告人らは、同日午前3時50分ころ、ベンツでA方前に戻った。
 

 その後、被告人らは、DとBの死体及びAをベンツの車内後部に運び入れ、犯跡を隠蔽するため、血痕の付着した玄関マットやコードを切断した電気掃除機を同じく車内に積み込み、強取した預金通帳やAのポーチ等を入れたA方の前記青色ショルダーバッグを持ち出すなどした上、玄関を施錠して、ベンツの運転席に被告人、助手席に王亮と楊寧が乗り込み、再び箱崎ふ頭に向かった。
 

 被告人らは、同日午前4時過ぎころ、同ふ頭の岸壁において、Bの死体の右手首と前記箱型鉄製重りを手錠で結束した上、同所から同女の死体を海中に投棄して遺棄するとともに、まだ息のあるAの左手首と前記ダンベルを手錠で結束し、これをDの死体の左足首に手錠で結束した上、Dの死体及びAを、もろともに同岸壁から海中に投棄して、そのころAを溺死させて殺害するとともに、Dの死体を遺棄した。〉

A家の会葬御礼

久留米にベンツを放置

 検察側の冒頭陳述では、その後の3人の行動についても〈犯行後の状況等〉として触れている。

〈被告人らは、前記犯行後、箱崎ふ頭の死体遺棄現場からやや離れた路上に放置されていた廃車の中に、A方から持ち出した掃除機、玄関マット、Bの死体を包んでいた布を隠匿するなどした。
 

 その後、被告人らは、Aらが自発的に所在不明になったかのように見せかけて時間を稼ぐため、ベンツを遠く離れた場所に放置しようと企て、久留米市方面に向かい、同日午前5時30分前後ころ、JR久留米駅付近の工場敷地内の駐車場にベンツを放置した。
 

 A方から久留米に至るまでの車内において、楊寧は、A方で強取した現金が約4万円弱にすぎなかったこと、強取したキャッシュカード等に係る預金口座は残高が乏しいことから、危険を冒してATMで現金を引き下ろすだけの価値がないことを被告人らに伝え、ATMでの現金引き下ろしをしないことに決めた。〉

 ATMでの現金引き下ろしをしない理由については説明されているが、なぜ彼らが行き先として久留米市方面を選んだのか、ということについては触れられていない。

報酬はわずか1万円

〈被告人は、ベンツの放置後、JR久留米駅前において、楊寧から、分け前として現金1万円を受け取り、王亮からは、犯行のために準備していたナイフ1丁、モデルガン1丁、透明粘着テープ2個の在中する紙袋を渡されて、同所で王亮及び楊寧と別れ、JR鹿児島本線を利用して、博多駅に戻った。被告人は、同駅から自宅に向かう途中のマンションのゴミ置き場に置かれていたゴミ袋の中に、透明粘着テープ2個、手袋1双、毛糸の帽子1個、ベンツの鍵を入れた紙袋ごと捨てて処分するとともに、ベンツの鍵と一緒になっていたA方玄関の鍵等3個を自宅付近の公園のゴミ籠の中にあった空き缶の中に投棄して処分し、モデルガンとナイフを自宅に持ち帰った。〉

 冒頭陳述では続いて、王と楊がA家から持ち出した物品の処分状況が説明され、彼らは久留米市から高速バスで福岡空港(福岡市)に戻り、そこからタクシーでアパートに帰ったことが明かされる。だが、彼らはダンベル等を購入した際の防犯ビデオが保管されていることをマスコミ報道で知り、犯行の4日後には福岡発上海行きの飛行機で中国に逃亡した、との解説で同陳述は終わる。

ADVERTISEMENT

 4人の殺害に関わった魏に渡された報酬は、わずか1万円だった。そしてその罪に対する罰として、やがて彼には死刑判決が下されることになる。

次の記事に続く 「(中国に)行かれとったら終わりやった」一家4人を惨殺→中国人留学生はすでに出国…元特捜班長(77)が明かした、緊迫した逮捕までの数日間

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。