父親は「その娘を殺さないでくれ」と哀願し…
〈5 Aに対する暴行・脅迫状況等
他方、Aは、同日(03年6月20日)午前1時40分ころ、友人と携帯電話で通話しながら、ベンツを運転して外出先から帰宅し、玄関の鍵を開けて屋内に入り、台所入口付近に至ったが、台所にいた楊寧は、Aに対し、「こっちに来い、座れ。」などと語気鋭く申し向けるとともに、王亮がDの頸部にナイフを突きつけている状況を示しながら、抵抗すれば、同児を殺害することを申し向けてAを脅迫した。Aは、自ら跪いて、「その娘を殺さないでくれ。」と哀願し、抵抗する姿勢を示さなかったことから、楊寧は、台所床上に両足を前方に投げ出す姿勢でAを座らせ、後ろ手に回した同人の両手首及び両足首に手錠をかけて、その反抗を完全に抑圧した。〉
Aさんが自宅に戻ってきた段階で、家の中にいたのは王と楊だけであり、魏はその時には屋外で身を隠していた。
〈被告人(魏)は、Aが帰宅したことを認めるや、A方玄関に向かったが、屋内に入ろうとした時には、既に玄関が施錠されていたため、当初侵入した仏間の窓から再度屋内に侵入し、台所付近に至った時、既にAが両手首と両足首に手錠をかけられて拘束されているのを知った。
そのころ、被告人は、仏間サッシ窓に付着した指紋を拭き取るなどの罪証湮滅工作を行った。〉
魏が屋内に戻るまでの間に行われた、王と楊による犯行について、冒頭陳述は、〈この間、Aが所持していた自分のポーチを台所床上に落としていたことから、楊寧は、その中にあった現金2万2000ないし3000円及びキャッシュカードを強取した。〉と説明する。
〈その後、被告人、王亮及び楊寧の3名は、Dが怖がるため、Aを、Dの視界に入らない玄関方向に移動させたが、その途中、楊寧は、Aにキャッシュカードの暗証番号を尋ね、Aが素直に答えなかったため、被告人にAを足蹴にするよう指示し、1階洗面所前廊下において、被告人がAの頭部又は肩部を蹴り付けたことから、Aがバランスを失って洗面所入口のガラス引き戸に倒れ込み、ガラスが破損した。〉
