前作『距ててて』の上映で長野県上田市を訪れた創作ユニット「点と」の2人(加藤紗希、豊島晴香)。そこではコロナ禍でも文化芸術が人が生きていく上で必要不可欠なものとして、さまざまに具体的な取り組みが行われていた。町のあり方に惹かれた2人は、ここで映画を作ろうとするのだった——。(全2回の2回目/1回目を読む)
『わたのはらぞこ』のお話
山々に囲まれた歴史ある街・上田を訪れたヨシノ(神田朱未)。東京での日々に苦しさを感じた彼女がこの街に来た目的は、ゲストハウスでありながら同時に劇場であり、カフェでもあるこの街の特別な拠点「犀の角」を訪ね“休憩”することであった。かつてこの上田には深い深い海があった。数年前、8メートルものクジラの化石が発見されたこの街を歩きながら、ヨシノは不思議な出来事に次々と巻き込まれていく。今が現実なのか、夢なのか、過去か未来かも曖昧な時間の中で、ヨシノの“休憩”は予想もしないものになっていって……。
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一軒家を借りて合宿スタイルで撮影
――一方で、地方で映画を撮影するのは資金面でも大変ではないかと思います。
豊島 リサーチを始めた段階では、まだ全体像が見えていなかったので、「とりあえず通ってみるか」という感じでした。具体的にお金のことを考え始めたのは、クラウドファンディングで予算を組む時ですね。やはり東京で撮るのとは格段にかかるお金が違うので、「これは大変だ」と。でもその時にはもう走り出してしまっていたので(笑)。
加藤 「やりながら考えよう」という感じでした。地方での撮影は、キャストもスタッフも一緒に滞在してもらわなければいけないので、やはり大変でした。合計14日間の撮影だったのですが、全員が14日間スケジュールを空けるのは難しいので、2回に分けて滞在する形にしました。
何より、撮影現場ではみんなの健康を第一に考えたいと思っていました。ホテルに泊まるのではなく、一軒家をお借りして、みんなで合宿スタイルで過ごしたんです。食事を作ってくれるスタッフに来てもらって、3食必ず栄養のある手作りのものを、地元の野菜などを使って食べてもらう。冷たいお弁当を毎食食べるのとは、全然違うと思うんです。
――インディーズだからこそできる、素晴らしい取り組みですね。
豊島 そうですね。出演者が映画美学校の同期で、ずっと一緒にやってきた仲間だからこそできたスタイルだと思います。これが知らない俳優さんにオファーする形だったら、合宿は難しかったかもしれません。でも、やっぱり温かいご飯を食べて気持ちが変わるというのは、前作の時から感じていました。みんながお腹いっぱい食べて、気持ちが和らいでいく。今回もそれができて良かったです。

