健康寿命が70歳を超えた人生100年時代。女医の富永喜代さんは「男女の営みは、中高年からが味わい深い!」と話します。ただ、中高年が恋愛や性愛を楽しむためには、熟年ならではの作法を知っておく必要があるそうです。それはいったい、どんな作法なのでしょうか?
ここでは、富永喜代さんの新著『新版 女医が導く60歳からのセックス』(扶桑社)より一部を抜粋して紹介します。(全2回の1回目/2回目に続く)
◆◆◆
「セックスしないこと」は問題でない
「妻としたいのにできない」
「若い頃のような夫婦生活を再開したい」
そう願う方は少なくないでしょう。しかし、そこに立ちはだかるのが「セックスレスの壁」です。
セックスレスとは、日本性科学会によれば、「病気など特別な事情がないのに、1か月以上性交渉がないカップル」と定義されています。日本人の性に関する大規模な実態調査「【ジェクス】ジャパン・セックスサーベイ2024」によれば、「月1回未満」と答えた人が全体の6割以上を占めました。
一般的にセックスレスは「問題がある状態」「悪いこと」と見なされる傾向があります。メディアでは、大規模調査の結果などを取り上げて、「一億総草食社会」「日本人はもうセックスをしないのかもしれない」という悲観論も見受けられます。しかし、結論から申し上げれば、セックスをしないこと自体は「悪いこと」ではありません。
2人の合意があれば、セックスにタブーはありません。したい人はしていい、したくない人はしなくていい。それが原則です。もし2人とも「セックスしたくない」と思っているのなら、それはそれで健全な選択です。事実、セックスをしていなくても、とても良好な関係を維持しているカップルは数多くいます。
もちろん逆に、2人が望んで毎晩求め合うことは、どれだけ年齢を重ねたとしても、決して恥ずべきことではありません。「よそはよそ」「うちはうち」、他のカップルと比べる必要はないのです。
お互いが「したい」なら性を楽しめばよいですし、「望まない」ならそれもカップルの形です。セックスレスが「問題」となるのは、片方が「したい」と思っているのに、片方が「したくない」という齟齬が生じている場合のみです。
