健康寿命が70歳を超えた人生100年時代。女医の富永喜代さんは「男女の営みは、中高年からが味わい深い!」と話します。ただ、中高年が恋愛や性愛を楽しむためには、熟年ならではの作法を知っておく必要があるそうです。それはいったい、どんな作法なのでしょうか?
ここでは、富永喜代さんの新著『新版 女医が導く60歳からのセックス』(扶桑社)より一部を抜粋して紹介します。(全2回の2回目/1回目から続く)
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男女の性愛戦略の生物学的な違い
「夫婦のセックスはもう卒業したい」
「だからといって、夫に風俗に行かれるのは嫌」
女性の心理は複雑です。しかし、そんな妻の本音を前に「じゃあ、どうすればいいんだ!」と閉塞感を覚える男性もいるでしょう。男性側からは「浮気じゃないんだから、風俗くらい許してくれてもいいじゃないか」といった声もよく聞かれます。
このすれ違いはなぜ起こるのでしょうか?
その背景を考える上でヒントになるのが、進化心理学的な「男女の性愛戦略の違い」です。
男性の生存戦略は、簡単にいえば「量」を重視する傾向があります。できるだけ多くの女性と関係を持つことで、自分の遺伝子をより広く伝えようとするのです。いわば「数撃ちゃ当たる」の精子ばらまき戦略です。
一方、女性の性戦略は「質」に重きを置きます。女性は妊娠すれば約10か月もの間、お腹のなかに赤ちゃんを抱え、自由に身動きできません。出産後も授乳など大きなコストがかかります。
そのため自分と子どもを外敵から守り、子育てに必要なリソース(時間、お金、労力など)を提供してくれる、信頼できるパートナーとの長期的な関係を築くことを本能的に求めるのです。逆に、子どもの父親に裏切られることは最大のリスクです。リソースの提供を受けられず、子どもの命を守れなくなってしまう可能性があるからです。
このように男女の生存戦略は非対称性があり、これが現代の私たちの感情や行動にも影響を与えているとも考えられます。もちろん、これはあくまで生物学的な傾向であり、個人差があることはいうまでもありません。
