風俗通いは「リソースの外部流出」
では、なぜ多くの女性は夫やパートナーの風俗通いを「許せない」と感じるのでしょうか。
夫が風俗に通うために使われるお金や時間は、女性にとってはいわば「パートナーの資源(リソース)の外部流出」です。風俗に行けば、1回あたり少なくとも数万円の出費がかさみます。
たとえ、夫がその費用を自分の小遣いから捻出していたとしても、風俗に行かなければ、家族での遊興費や子どもの教育費、老後資金に充てられたかもしれません。時間についても同じことがいえます。
つまり女性にとっては、夫が自分の快楽のために家庭以外の対象に時間とお金を割いているという行為そのものが、「裏切りの兆候」として感知されます。
「風俗は嫌」という言葉の裏には、他の女性への嫉妬や妻としてのプライド、子どもを守りたいという防衛本能など、さまざまな感情が複雑に絡み合っていますが、同時に数万年にわたって続いてきた生存戦略が、私たちの感情にも影響を与えているとも考えられるのです。
他人の家庭と比較する「論点ずらし論法」はナンセンス
ただ、よくある話として、「そうはいっても、同僚の嫁は風俗くらい許している。なぜ君は許してくれないんだ」といった反論をする男性もいます。これは論点をすり替えようとする、いわゆる「論点ずらし論法」にあたります。
そもそも、セックスという極めてプライベートな問題を他人の家庭と比較すること自体、ナンセンスです。「他人の妻が許している」「だから君も許すべき」といった誤った一般化によって、「私は嫌だ」という妻の感情が頭から否定されているのです。
また、「セックスレスなんだから、風俗通いくらい許してくれてもいいじゃないか」などと正当化しようとすることも、信頼関係を壊す要因となります。その根底には「男性の性欲は受け入れられて当然」という考えも透けて見えますし、「私は嫌」と訴える妻の気持ちを無視する「心の暴力」と捉えられかねません。
大切なのは、「なぜ嫌なのか」とパートナーの気持ちを理解しようとする姿勢です。