〈あらすじ〉
北アイルランドの都市ベルファストで生まれ育ったニーシャ(MCネーム:モウグリ・バップ/本人)とリーアム(MCネーム:モ・カラ/本人)は幼馴染み。ある日、ドラッグパーティーの会場から逃げ遅れ警察に捕まったリーアムは、取り調べで英語を話すことを拒否。そこで通訳者として派遣されてきたのが、音楽教師のJJ(MCネーム:DJプロヴィ/本人)だった。
リーアムの手帳にアイルランド語で書かれていた歌詞に才能を感じたJJは、いまや失われつつある母国語の復権のために、アイルランド語でラップをやることを2人に提案。こうしてヒップホップ・トリオ「ニーキャップ」が誕生する。さっそく3人は、JJの自宅のガレージでレコーディングを開始する。酒とドラッグにまみれながら……。
〈見どころ〉
本人役を演じる3人はいずれもアイルランド語のネイティブスピーカーだが、北アイルランドではアイルランド語の第一言語話者はわずか6000人。2022年までは公用語として認められていなかった。
実在するヒップホップ・トリオの半自伝的物語
絶滅寸前だったアイルランド語でラップをし、その過激な言動から“セックス・ピストルズ以来、最も物議を醸すバンド”の異名をとるアーティスト、KNEECAP。その誕生と軌跡を、本人たちが演技初挑戦で映画化。
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芝山幹郎(翻訳家)
★★★★☆アイルランド語(アイルランドのゲール語)は、ベルファストではこんなに抑圧されていたのか。南の道路標識などは、以前から英語と併記されていたのに……と現地の事情を思い起こしながら見た。語り口はもう少し磨けそうだが、ラップのリズムと粗削りな笑いが、映画に鼓動をもたらしている。
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斎藤綾子(作家)
★★★★☆多言語を使いこなせたらカッコイイ。だが母国語が禁止となったら話は変わる。日本語しかわからない身には恐ろしい実話だ。母国語で抵抗のラップを歌う3人が本人という事にも驚く。過激に演ずる脇役たちも作品に深く面白さを刻む。笑って見ていたのが「ニーキャップ」の意味を知って縮み上がった。
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森直人(映画評論家)
★★★★☆タフでユーモラス。言語のローカリズムに焦点を当てた音楽による抵抗の詩。本人役を演じるニーキャップの面々、特にDJプロヴィの“役者っぷり”も良い。『トレインスポッティング』『8 Mile』『ハッスル&フロウ』等の因子を混ぜ込みつつ、アイルランドらしい反骨の英雄譚という王道の最新形だ。
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洞口依子(女優)
★★★★☆胸を張れるほど誇らしく下品なヒップホップのミュージカル・コメディ要素も含んだベルファスト版『ストレイト・アウタ・コンプトン』の趣き。北アイルランドの紛争へのパンチライン、その土地の社会的背景、言語、人々を通じてニーキャップを知らない私でも存分に楽しめた。先住民文化の保存は大事!
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今月のゲスト
マライ・メントライン(著述家)★★★★☆「政治がかったアーティスト系」というベクトルから想像されるダサさや説教くささが一切ない、驚異の面白すぎ超リズム映画。素晴らしすぎて「ちょっと待て、このメッセージ性に即共感しすぎるのもどうか」と意識的に踏みとどまる必要も感じる一種の危険作。冒頭2分で感じた傑作の予感は的中した!
Marei Mentlein/1983年、ドイツ生まれ。テレビプロデューサー、コメンテーター。そのほか、自称「職業はドイツ人」として幅広く活動。
- もう最高!ぜひ観て!!★★★★★
- 一食ぬいても、ぜひ!★★★★☆
- 料金の価値は、あり。★★★☆☆
- 暇だったら……。★★☆☆☆
- 損するゾ、きっと。★☆☆☆☆
©Kneecap Films Limited, Screen Market Research Limited t/a Wildcard and The British Film Institute 2024 配給:アンプラグド
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『KNEECAP/ニーキャップ』
8月1日(金)〜
監督・脚本:リッチ・ペピアット
2024年/英・アイルランド/原題:KNEECAP/105分
新宿シネマカリテほか全国順次公開
https://unpfilm.com/kneecap/




