〈あらすじ〉

 1989年のチューリッヒ。冷戦下、中立国であるスイスでもソ連の共産主義に対する恐怖が蔓延しており、スイス警察は、密かに危険分子たる国民の行動を監視していた(のちに「フィシュ・スキャンダル」として発覚)。

 真面目だが平凡な男ヴィクトール・シュエラー(フィリップ・グラバー)も、警察官として反体制派の情報収集と監視に余念がない。ターゲットはスイス軍廃止を訴えるデモを展開していたシャウシュピールハウス劇場。極秘の潜入捜査を命じられたヴィクトールは、髭を剃り、髪型や服装も変えて、船乗りの自由人ヴァロ・フバッハーに変身。エキストラ俳優として劇場に潜り込む。そこで怪しげな動きをみせる演出家らに目を光らせるが、次第に看板女優のオディール・ヨーラ(ミリアム・シュタイン)に惹かれていく。また劇団員たちと交流を深めるうちに、自らの任務にも疑問を抱くようになり――。

〈見どころ〉

 劇場の次回公演は、シェイクスピアの『十二夜』。その稽古の様子や独特な演出にも注目だ。

スイス最大の政治スキャンダル下で繰り広げられるロマンスコメディ!
1980年代のスイスで起きた「フィシュ・スキャンダル」の当事者である警察官を主人公に、任務と恋に揺れる姿をコミカルに描く。『Der Freund』『Die Standes-beamtin』(いずれも日本未公開)の大ヒットでロマンスの名手とされるミヒャ・レビンスキー監督作。

© Langfilm / Bernard Lang AG 2020 配給:カルチュアルライフ
  • 芝山幹郎(翻訳家)

    ★★★☆☆ベルリンの壁崩壊前後に、スイス警察がこんなややこしいことをしていたとは知らなかった。いかにも、という感じのスキャンダルが素材だが、コメディ仕立てが半端で、頭もハートも刺激されない。速度と技巧が不十分だった。

  • 斎藤綾子(作家)

    ★★★☆☆ 国家が国民を監視する社会など、猜疑心と密告と裏切りで恐ろしい描写があるに違いないと怯えていたら、ゆるい展開にびっくり。誠実な警察官ヴィクトールの心情を微笑ましく描くことで、この世に希望を放ちたかったのか。

  • 森直人(映画評論家)

    ★★★☆☆ルビッチ監督の『生きるべきか死ぬべきか』から着想と構造を借りて応用した社会派喜劇だが、笑いの質を含めて少々野暮ったい作り。国民監視や思想的偏見といった主題は極めて今日的なので、雑味を削れば鋭さが増した気が。

  • 洞口依子(女優)

    ★★★☆☆実際にあった話をベースに当時を想起させる背景にラブコメタッチを盛り込むユニークさ。しかし約100万人のスイス市民が左翼主義の疑いをかけられ秘密裏に監視されていた話を面白がるというのは、どこか皮肉ではある。

  • 今月のゲスト
    岡本真帆(歌人)

    ★★★★★気持ちの良いラブコメディ! 与えられた役割からはみ出し、警察でも俳優でもなく、一人の「私」として想いを吐露するシーンに、ぐっときた。音楽も素敵。明るい気持ちにさせてくれる作品です。もう一度観たい!

     

    おかもとまほ/1989年生まれ、高知県出身。東京と高知の二拠点生活を送りながら、歌人、作家として活躍中。著書に、歌集『水上バス浅草行き』『あかるい花束』、エッセイ集『落雷と祝福』などがある。

  • 最高!今すぐ劇場へ!★★★★★
  • おすすめできます♪★★★★☆
  • 見て損はない。★★★☆☆
  • 私にはハマりませんでした。★★☆☆☆
  • うーん……。★☆☆☆☆
警察が市民を監視していたという事実は、当時のスイス国民にとって大きな衝撃であり、傷ついた人も多いため、この事件をコメディとして描くことを疑問視する反応もあったとか。
© Langfilm / Bernard Lang AG 2020 配給:カルチュアルライフ
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『役者になったスパイ』
監督:ミヒャ・レビンスキー(『まともな男』)
2020年/スイス/原題:Moskau Einfach!/102分
1月23日(金)~
恵比寿ガーデンシネマ、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
https://culturallife.co.jp/yakushaspy/