まさかの却下「特に過重な職務に従事した事実は認められない」

 これほどまでに過重労働の証拠を集めたにも関わらず、地方公務員災害補償基金の判断は「公務外」、つまり義男さんの死の原因は仕事ではないとした。申請前には元同僚と「絶対に認められる」と思っていたため、「二度目の死刑宣告を受けたようで、ショックだった」と祥子さんは話す。

 しかも、公務外という判断に至った調査はあまりに杜撰であり、その決定理由も納得できなかった。亡くなる前日や当日については、「本人は休暇を取得しており、職務には従事していない。したがって、…特に過重な職務に従事した事実は認められない」、さらには、部活動は休日でも「遅くとも17時ごろには終了しており、強度の肉体的過重があったとは認められない」と意見を述べて、公務外だと判断した。

 しかし、これはよく見るととんでもない見解だ。前段の主張では、過重労働したその日に倒れなければ公務災害と認めないということになる。現在の医学的知見にも、民間の労働災害の認定基準にもまったく反している。また後段は、休日の部活が夕方に終わったことが「肉体的過重」が不在である理由になっている。これでは休日にフルタイムで働くことが当然だということになる。

ADVERTISEMENT

 さらに、あれほど執拗に亡くなる前の毎日のスケジュールの提出を求めておきながら、その間の労働時間がどのくらいだったのかを示すことなく、残業は「最も多い月で76時間程度、最も少ない月で28時間程度」と地方公務員災害補償基金は一方的に判断している。この決定書類にはそもそも月76時間程度の残業をしていたのが何月だったのかすら書かれていない。加えて、それ以外の月の労働時間の記載は一切なく、2年かけて作られた報告書としては不十分かつ不誠実としか言いようがない。