高温の原因は、いうまでもなく気候変動だ。
ソウル市の平均気温は、1925年の10.7度から2024年には14.9度に上昇。韓国の気象庁はIPCC(気候変動に関する政府間パネル)のシナリオに基づき、2100年には最悪の想定でこれが21.1度まで上昇するとの予測を公表している。
気温上昇にともなう「気候災害」も、珍しいことではなくなった。
今年3月下旬には、韓国南東部で同時多発的に森林火災が発生。33人が亡くなり、東京23区の1.6倍に相当する10万4000haが焼失するという史上最悪の山火事となった。被害が拡大した原因とされるのが、強風、降雨量の減少、そして高温だ。大きな被害を被った慶尚北道義城郡も21世紀に入って平均気温が2~3度近く上昇しており、山火事が発生した当日に25.2度、翌日に26.4度という初夏のような最高気温を記録。こうした高温が地表をさらに乾燥させ、火災に拍車をかけたと考えられている。
異常な豪雨も常態化して久しい。韓国はもともと日本より降水量が少ないが、2022年8月にはソウル市で1時間あたり141.5mmという前例のない集中豪雨が発生した。これは日本の観測史上で歴代16位に相当する数字だ。
韓国の気象庁はIPCCの用語を韓国語訳する形で、「極限豪雨」という新たな分類を2023年から導入している。2025年7月16日から20日の5日間、韓国の中部・南部を中心に広範な範囲で史上最大規模の「極限豪雨」が猛威を振るった。韓国中西部・忠清南道瑞山市では、1時間あたりの降水量が114.9mmで記録を更新。7月28日時点で24人が死亡、4人が行方不明になった。
地面を埋め尽くすほどの「ラブバグ」が大発生して阿鼻叫喚に
気温の上昇は、虫の大量発生という想像もしない異変も引き起こしている。異常発生しているのは「ラブバグ」だ。
ラブバグとは、日本でヒイロトゲナシケバエと呼ばれるハエの仲間で、沖縄でも2017年頃から急増が確認されている。ハエといっても人の生活圏で病原菌を媒介するイエバエなどと異なり、本来は山中に生息する無害なケバエの一種だ。
もともと韓国にはいなかったが、最近になって首都圏の港湾都市・仁川市を通じて海外から流入したらしい。DNAの分析から、中国山東省が故郷だと見られている。2010年代から目撃例が相次いだ後、2022年から首都圏で大量発生するようになった。
ラブバグは体長1cmほど、細めの黒い体に赤い胸部が目印。だが何より目を引くのは、成虫のオスとメスが尾部でつながった状態、つまりカップルが交尾中の状態で飛び回ることだ。よく似た昆虫がアメリカで 「ラブバグ(lovebug: 愛の虫)」と呼ばれることから、韓国でもそれがニックネームとして定着した。
名前はロマンチックだが、その大群が襲来した地域の住民は悲鳴を上げている。
大量発生の原因とされるのは、やはり気温上昇。亜熱帯気候に生息するラブバグにとって、韓国が繁殖に適した環境に変化したようだ。また2025年は降雨量が少なかったことが、その生育に影響してしまったと言われている。
