「プラスマイナスって何?」
原爆が投下されたその年だけで、広島は14万人プラスマイナス1万人、長崎では7万4000人の方が亡くなったと一般的には言われています。皆さん、普段のニュースで、例えば事件事故が起きて、「今日は3人の方が亡くなりました。もしかしたらもう4~5人亡くなっているかもしれません」なんてニュース、聞かないですよね?
どんなに大きな災害が起きても、最後の一人のお身元が分かるまで、一生懸命探しますよね。だけれども、戦争になったとたんに、死者の数がとっても乾いた数字になってしまう。「プラスマイナス1万人って、何ですか?」って思いませんか?
それがやっぱり戦争なんだなって、取材をしながら私はいつも感じています。
原爆が投下された1945年、その年だけで広島と長崎では約21万人もの方々が亡くなっている。佐伯敏子さんは言いました。「生きている人は簡単に21万って言う。でもね、21万の死体を目の前に積んだらどんな風景になるか、想像してごらんなさい」と。
今こうして、戦争を体験したことがない私が、さらに体験したことから遠い学生の皆さんに、このような話をしないといけない。戦後80年が経って、戦争で起きた真実に迫るというのは、時間が経過して難しい時代になっています。
でも、私たちには想像力があります。あのとき、あの瞬間――原爆が投下された下にいた人たちがどうなったのか――それをぜひ、皆さんの想像力で、思いを馳せてほしいなと思っています。
去年、被団協さんがノーベル平和賞を受賞されました。私は、このノーベル平和賞というとても大きな賞は、もちろん被団協さんの絶え間ない歩みに与えられたものではありますけど、広島そして長崎、その後のさまざまな原子力関連の事故や核実験で亡くなった犠牲者すべてに、与えられたものであると思います。
今日こうして、一緒にこの時間を過ごしてくれた皆さんが、今年の8月6日、8月9日のニュースを、今までとちょっとでも違う気持ちで聞いてくれたら嬉しいです。
以上です。ありがとうございました。
(大きな拍手が沸き起こる)

