石破氏は元々「保守層」に嫌われていた。それなら腹を決めて党の外(一般世間)に自分らしさを訴えればよかったものを、党内の「保守層」に媚びた。でも効果がなかった。結局、無党派層や中道も含めてあらゆる層から嫌われた。参院選で負けたのは当たり前である。

結局は自分の地位を守るための判断なのか

 そもそも本来の保守とは寛容さではなかったか。排外主義的な言説を支持する「保守層」が自民党の外に流れたならむしろ良いチャンスだったのではないか。政権発足を機に、穏健保守を立て直す機会にすればよかったのだ。やはり責任は重い。

 それでも政権の座に粘る石破首相を好意的に解釈するなら、8月15日の終戦の日に自分らしいメッセージを出したいのだろうと予想できた。

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 しかし先週金曜夜に朝日新聞は『石破首相の戦後80年メッセージ文書 終戦の日も9月2日も見送りへ』と報じた。

 メッセージ発出で保守派のさらなる反発を招き、「石破おろし」が加速しかねないと判断したという。結局は自分の地位を守るための判断なのか。

石破茂首相 ©時事通信社

 ただ朝日新聞は「メッセージを文書で出すことを見送る方向で調整に入った」と書いている。これだと「文書」は出さないが何らかのコメントは出す可能性もあるとも読める。

 このあたりをどう読めばよいのか? 時事通信社解説委員の山田惠資氏に聞くと、石破首相が3月に防衛大学卒業式でおこなった訓示にヒントがあるという。首相は訓示の最後で文庫の『戦艦大和ノ最期』(吉田満)を卒業生に勧めていた。

 山田氏はこれを「戦争の悲惨さを伝えようとしている」とし、「石破氏は常々、日本は戦争の総括をしていないと口にしている」ことに注目する。首相個人のメッセージについては、文書で出すには私的諮問機関を設置して検証が必要なので、コメ問題やトランプ関税、選挙で時間がとれなかった物理的な要因もあったのでは?と。「もし9月以降も政権が存続するならば、秋以降にメッセージ文書の検討を続けたいのでは」という。保守派に配慮して「談話」をやめた時期から、直近はやる気モードになっているのでは?とも。