岩切 「発達障害の診断を受けているので、入れる保険がない」というのが多いですね。あとは住宅ローンに対する不安や「なぜかお金が貯まらない」、「障害者雇用に切り替わって年収が下がるけどどうすればいいか分からない」――こういった相談をよく受けます。 

 

「私もできたから、あなたもできる」とは言いたくない

――発達障害当事者に対して、同じ立場から伝えたいメッセージや感じていることはありますか。

岩切 当事者に伝えたいメッセージは特にないんですよ。いつも「馴染めない」と感じながら社会の中で生きている人が多いと思うので、とにかく応援したい。

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「こんな自分でも頑張れば出来たんだから、誰にでも、あなたにでもできるはず!」というメッセージを発信する人もいますが、自分はこのようには伝えたくないと思っています。

――それはなぜでしょう。 

岩切 僕は、少し運が良かっただけだからです。さっきの話の続きですが、ファッションモデルが、168センチの僕に「私は頑張ってモデルになれたから、あなたもモデルになれる!」と無責任に言うことって、ないと思うんです。身長も骨格も違うんだから当たり前です。

 でも、社会では「私もできたんだから、あなたもできるはず」と錯覚してしまう人が多くいます。遺伝子も生まれ育った環境も違うのにです。「発達障害の自分でもできた」という他人の言葉を信じる必要はありません。この考えの先には、できない人は努力が足りていない、という自己責任論があると感じます。

 今うまくいってない人も、本人の努力が足りていないわけではないと思います。環境とか色んな要素があるから、なんでも自己責任にはしたくありません。無理せずに自分らしく生きられる人が増えることを願っています。そのために切り離せないツールである「お金」をサポートするのが自分の役割だと思っています。

 

写真=山元茂樹 /文藝春秋

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