「10代からずっとオーディションを受け続けて、カッコイイね!っていっぱい言われてきたんですよ。カッコイイね!カッコイイね!カッコイイね!って言うんですけど、オーディションではいっさい受からないんですよ。要は、顔がちょっと濃いのがどうやらネックになってるぞ……っていうことに気づき始めたんですね。13、14、15ぐらいの時に」(TOKYO FM『Challenge Stories』2017年10月28日放送)

「エキストラさえも拒まれるのよ。我々みたいのは、目立っちゃうから。自分の容姿をとにかく呪い倒した10代だった」(フジテレビ『ボクらの時代』2022年3月6日放送)

城田優 ©時事通信社

 嵐莉菜は「私のビジュアル的に」、城田優は「顔がちょっと濃いのがネック」と、あえて言葉を濁している。だがそれは大衆の感情を刺激しないための彼らの配慮である。ミックスルーツの俳優が日本の芸能界において、ある状況で特殊に不利になる「壁」について彼らは言及しているのだ。

ADVERTISEMENT

「周りの人は日本人だと思ってくれない」

 ファッション雑誌にミックスルーツモデルの活躍の場は多くある。バラエティにおいても珍しくない。だが、映画やドラマの役をめぐるオーディションにおいて、突然その「壁」は現れて彼らを阻む。

「めちゃくちゃ、くじけたよ。学園もののオーディション行っても『いや君みたいな子はクラスにいないんだよね』とか言われるのが一番きつかった。『俺はいるじゃん』って思ってたんだよね。『俺はいるよ!』って」(フジテレビ『めざまし8』2022年1月13日放送)

 城田優がオーディションで受けた「君みたいな子はクラスにいないんだよね」という言葉は、嵐莉菜の「私のビジュアル的に経験できると思っていなかった学園ドラマ」というコメントと一直線につながっている。

「カッコイイね!といくら言われても(俳優の)オーディションではいっさい受からない」という城田優の言葉の通り、モデルという憧れの対象なら開かれるドアが俳優として閉ざされるのは、「どうせ私たちとは違う」という共感をはばむ壁がそこにあるからだ。

『マイスモールランド』のオーディションで川和田恵真監督は、嵐莉菜に対して「自分は何人だと思いますか?」と問いかけたという。それは川和田監督自身が日本と英国のミックスルーツであり、日本社会の中のミックスルーツに対する視線の中で育ってきたからこそ聞けた質問だったのかもしれない。

嵐莉菜と川和田恵真監督 映画『マイスモールランド』公式Instagramより

 その質問に対する「自分のことを日本人だと言っていいのか分からないけれど、私は日本人って答えたい。でも、周りの人はそう思ってくれない」という嵐莉菜の答えは、日本社会の中で育つミックスルーツの子供たちの多くが悩む壁の存在を告白した言葉として重く響く。