「私のビジュアル的に経験できると思っていなかった学園ドラマ、それも誰もが憧れる『ちはやふる』という世界観に、今度は自分が入り込める側っていうのがとても光栄でした」
日本テレビで放送中のドラマ『ちはやふる-めぐり-』で村田千江莉役を演じる嵐莉菜が6月の制作発表会見で語ったコメントに、やはり「あの壁」はまだ存在していたんだなと思わされた。
ミックスルーツの俳優を阻む“見えない壁”
嵐莉菜の母親はドイツと日本、父親はイラン、イラク、ロシアのミックスルーツ。5つのルーツを持つ彼女は、10代半ばからモデル活動をはじめ、ミスiD2020グランプリ受賞。少女たちの憧れであるファッション誌ViViの専属モデルとなった。
女子高生の制服を着てカメラの前に立ったことがないわけではない。ただそれは「学園ドラマ」ではなかった。2022年、国内外で多くの映画賞を受けた川和⽥恵真監督の『マイスモールランド』で、嵐莉菜は日本の高校に通うクルド系難民の一家の少女を演じ、その演技は映画関係者から高く評価された。
第45回山路ふみ子映画賞 新人女優賞。第47回報知映画賞 新人賞。第36回高崎映画祭 最優秀新人俳優賞。第77回毎日映画コンクール スポニチグランプリ新人賞。第96回キネマ旬報ベスト・テン 新人女優賞。おおさかシネマフェスティバル2023 新人女優賞。一般的にこれは「初主演映画で新人賞を総なめ」と言われる状態である。新人女優がこれだけの実績を残せば、普通は断り切れないほどの出演依頼が舞い込む。同世代を演じる学園ドラマ出演も若手新人女優定番のコースだ。
だがその後、本人が語る通り『ちはやふる-めぐり-』まで、学園ドラマへの出演はなかった。そしてそれは「私のビジュアル的に経験できると思っていなかった学園ドラマ」という言葉からもわかる通り、必ずしも本人が出演を避けた結果ではなかったように思える。
日本人の父とスペイン系の母のミックスルーツを持ち、今では舞台でも映画でも確固たる地位を築いた俳優、城田優は、その「壁」について何度か語っている。

