彼が殺害したのは「院長」ではなく…
ただ、高橋には、同クリニックの医療方針は“死にたくない人間の弱みにつけこんだ”商売優先主義としか思えなかった。Kの経営者が院長の妻だったことも彼の疑念を濃くする。詳細は定かでないが、高橋はAさんに己の疑惑を打ち明け、もし死ぬことがあったら必ず復讐を果たすと一方的な約束を口にする。
2003年1月27日、Aさんが死亡。症状は末期で治療の施しようがなかった。高橋は哀しみから立ち直るべく、翌2004年夏、消防士採用試験に挑むも不合格。生きる意味を失いかける。が、自分にはやるべきことがある。効果のない医療でAさんを死なせた院長への報復。決行日は彼女の3回忌に当たる2005年1月27日に定めた。
この日、高橋はバッグにナイフを忍ばせたうえで患者を装い病院を訪れた。が、実行には踏み切れず、翌28日、改めてクリニックに足を運ぶ。果たして、院長は院内にいなかった。そこで、2階のKに足を運んだところ、「院長夫妻は旅行で2日間は戻らない」という。
であれば、犯行をあきらめるか、出直すのが通常だろう。が、高橋は院長の所在を確認したことで怪しまれると思い、“口封じ”のため、何の関係もない女性従業員2人を刺殺する。ちなみに、この日は被害者の1人であるTさんの最終出勤日だった。
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