米国で不文律を守っている選手でも、故郷の中米でプレーする時は感情を露わにすると述べ「(批判者は)誰もが同じように行動し、同じように振る舞うべきだと信じ、いつもそれが『リスペクト』だと主張する。真のリスペクトとは、文化の違いを受け入れること」と主張した。

 主張に対する答えは、両チームが再び顔を合わせた翌2016年のレギュラーシーズンでもたらされた。5月15日、バティスタはレンジャーズから報復死球を受けて一塁走者となり「メッセージを伝えようと思った」と二塁に激しくスライディング。レンジャーズの二塁手オドーアと殴り合い8人が退場処分を受けた。

「好きなようにプレーさせよう」

 大リーグの不文律を巡る論争が文化の比較に及び、更には大乱闘に発展したことで、それまで野球の美徳とされてきた不文律を疑問視する報道が出てきた。象徴的なのはスポーツ専門局ESPNで、2016年10月には韓国野球のバットフリップを特集した。「大リーグでは、バットフリップは長年、相手への侮辱の象徴とされてきた」というナレーションで始まる特集は、喜びを素直に表す韓国のスタイルと球場の熱狂を伝えた。

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ホームランを放ち、確信歩きで「バットフリップ」をする大谷翔平 ©時事通信社

 世論の高まりに合わせるように大リーグ機構は2018年、ポストシーズンに合わせて不文律を意識したコマーシャルを流した。伝説的選手グリフィー氏の語りで「打席に残って打球を見送るな。バットフリップをするな。祝福はなし、下を向いていろ」など不文律を次々と挙げ、最後に「No more talk. Let the kids play」と締めくくる。グリフィー氏の言葉として訳すなら「黙って、やつらの好きなようにプレーさせよう」ということになる。

「the kids」は若い選手たちを指すと同時に「the Kid」という若き日のグリフィー氏の愛称を意識した表現でもある。これは大リーグ機構が出した不文律の改訂許可だとも言えた。