今後、劇的な混雑緩和は難しそうだが、あえて期待するなら、2025年3月から本格稼働した「2階建てグリーン車」への分散だろうか。
全席コンセント付き・Wi-Fi完備で広々としたグリーン車は、1両90人の2両編成を増結する形で、輸送能力が純増する。早ければ来年に発表する2025年度のランキングから徐々に混雑率が緩和されていくかもしれない。
混雑度1位の路線はやっぱり……
2024年度のJR路線で、混雑率トップは「埼京線」だった。
1位:埼京線(計測区間:板橋~池袋)
混雑率:163%(2023年:160% 2020年:127% 2019年:185%)
2021年度から1位を連続で記録しており、コロナ前と比較した混雑度は次のようになる。
〈2024年度〉
編成・本数:10両編成・19本
輸送力・輸送人員:2万8040人・4万5790人
混雑率:163%
〈2019年度〉
編成・本数:10両編成・19本
輸送力・輸送人員:2万7960人・5万1850人
混雑率:185%
1時間当たりの輸送力ではコロナ禍前とさほど変わらず、輸送人員(ピーク時に乗車した人数)も当時と比較して9割弱にとどまっているが、不名誉な1位に輝き続けている。
埼京線が混雑する原因は「車両不足」と「他より短い10両編成」にある。
埼京線の車両はりんかい線、その他私鉄では相鉄などに乗り入れており、見かける範囲はかなり広い。にもかかわらず、車庫は川越線・南古谷駅に近接した「川越車両センター」にしかなく、現行の10両・38編成以上に車両を増やして増便しようにも、配置できるスペースがないのだ。
他の路線が続々と15両編成化しているなか、埼京線は今のところ10両編成から増結しそうな気配がない。そもそも十条・板橋の両駅が15両に対応しておらず、地上にある十条の高架化が済む2031年以降に、何らかの動きがあれば可能性はあるかもしれない。とはいえ、乗り入れ先であるりんかい線も10両編成以上の対応ができておらず、混雑の根本的な対策となる15両編成化には、そこまで期待が持てないかもしれない。
かつ、車両センターは埼京線と離れた川越線の沿線にあり、車両の入出庫だけで単線の容量が埋まってしまう。荒川の強風で速度制限がかかると、車両の送り込みすらおぼつかなくなる。ダイヤが乱れても車両の送り込みがスムーズにできないことからトラブルも多く、乗客の集中による混雑に輪をかけている。
国交省の集計によると、東京近辺の平均混雑率は前年度の136%から139%に悪化している。全体的に混雑悪化か横ばいの路線が多く、首都圏の通勤ラッシュは徐々に戻っているといえるだろう。
