郊外に向かう路線では落ち着きも

JR路線の混雑率、トップ10(国交省調査を基に作成)

 ここまで触れたように、都心に向かう路線の混雑ぶりはコロナ前に戻りつつあるが、一方で郊外に向かう路線では利用者の減少で混雑が落ち着き気味だ。

 例えば、横須賀線(計測区間:武蔵小杉~西大井)だと、2019年度には1時間に2万504人だった輸送能力が2024年度は1万8680人に低下しているにもかかわらず、輸送人員はさらに減少。その結果、混雑率が195%から134%まで大幅に改善している。

 これは、同様の都心行きルートを担う「相鉄・JR直通線」「相鉄・東急直通線」が開業したことによる影響と思われる。例えば、直通列車が走る東急新横浜線の混雑率は「54%」と混雑度は低いが、通勤の選択肢を増加させて横須賀線の混雑度の緩和に寄与しているはずだ。

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相鉄・東急直通線の車両(筆者撮影)

 ほか、根岸線ではコロナ禍前と比較して輸送人員が2万8080人→1万5210人とほぼ半減している。混雑率は146%→73%と大幅に改善した。

コロナ禍でトップに躍り出た「地方路線」の現状は?

 振り返れば、コロナ禍で混雑率ランキングに大幅な異変が生じた。2020年度は従来上位を独占していた首都圏の路線が、業務のリモート化や外出規制で利用者が大幅に減少。代わって「JR信越本線」(新潟県・混雑率135%で1位)や「JR可部線」(広島県・混雑率132%で3位)など、地方の路線が上位に食い込んできた。

 もちろん、これらの路線は利用者が急増したわけでもなく、首都圏路線を利用する人の大幅減で、相対的に順位を上げたに過ぎない。こうした地方路線のうち、2024年度時点では新潟県内の路線(信越本線・白新線・越後線)の3線がコロナ禍前の利用水準に近付くか上回っており、白新線が10位(142%)、信越本線が11位(141%)にランクインした。

 新潟都市圏の人口は140万人ほど、信越本線では朝の輸送力が1時間に4000人以上と広島・仙台・福岡などの近郊路線とそん色ない。ただ、新潟だけ私鉄・地下鉄がなく、鉄道での通勤・通学がJRに集中している。混雑率調査が行われる10月以降、冬場の降雪とともに、さらに混み合うのだろう。

 一方で可部線は、旧来の2両編成の4両化を進めていることもあり、混雑率が2020年度の132%から2024年度には114%まで激減した。しかし、近くにアストラムラインが走り、バイパス道路や旧道では2~3分に1本は市内行きのバスが来る状況でアクセスは充実している。その中での混雑率114%は、かなり驚くべき数値だ。

次の記事に続く 「日本一の通勤地獄」かも…朝の“混雑率”が5年連続トップなのに、なぜか赤字の「残念すぎる路線」とは《2024年度・公営、地下鉄、新交通システム混雑度ランキング》

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