「呆然とする私の頬をお父さんは一発はたいて、『いい加減にしろ!』って一喝しました。それから『一体お前は何がしたいんだ』と促され……」

 10代の頃は学校にも行かず、フラフラしていたラッパーのLUNAさん。そんな彼女を見かねてか、父親であるMr.マリックさんは一喝。人生を変えてくれた「ビンタの思い出」とは?(全3回の2回目/続きを読む)

Mr.マリックの娘で、ラッパーのLUNAさん ©原田達夫/文藝春秋

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男2人に拉致されたことも…「家出時代」の怖い思い出

――中学卒業後、家から「逃げた」意図は?

LUNA 親に自分の気持ちを伝えるためには行動で示すしかないなと思ったんです。当時はまだ携帯もないし、一緒に家出をした友達と地元の公園で寝泊まりしたり、渋谷で遊んだり。江の島に行ったこともありましたね。海辺だったら寝れるかなあという魂胆でした。お金がないので、転々とナンパされて、食と屋根を確保することの繰り返しでした。

――公園での寝泊まりやナンパ待ちで、怖い目にあったことはないんですか。

LUNA 一応、自分たちなりに気をつけるんですが、一度だけ本当にヤバかったことはありましたね。2人組の男で、実家住みの自室に招き入れられたら、真っ暗。さすがに友達と「これはヤバそう」だとアイコンタクトをとったんだけど、あっという間に2人とも手足を縛られて、ナンパしてきた奴らがドラッグをやり始めて……。注射器を使っていたから、ほぼ確でそう(ドラッグ)なんじゃないかと思います。

 ただ親がドアの向こうにいるのは分かっていたので、大声をあげて縄を解いてもらい、ブワーって逃げました。これでさすがに懲りて、実家に電話してお母さんに迎えに来てもらって……実質、家を空けていたのは2週間ぐらいです。

――それで、高校には行ったんですか?

LUNA 結局合格したかどうかわからないし、そもそも入学していないです。中卒です。学力的には小卒ですね。でも、高校に行かないなら行かないで、とにかく自分のやりたいことを見つけなきゃいけないと思って、まずはアルバイトを探しました。とはいえ16歳ができることなんて限られちゃうんですけど。

 本当は、ずっと歌がやりたかったんです。でも当時、「2世」がすごく叩かれる時代で、また親のことを言われるのも嫌だなぁと。心のどこかで歌への想いを捨てきれないまま、サーフィンも好きだから、そっちに打ち込もうかなとか。何も考えず、毎日自由で、パーティーを開いて夜は踊りに行って……やりたいことをやっているという楽しさはありました。