また今後は、個人投資家にも国債購入のメリットが出てくるはずです。個人向け変動債は1年経てば解約は自由で、最低金利も設定されているので元本割れするリスクがなく、とても良い商品。認知度を上げて、個人だけでなく、一部の法人向けに売り出すことも一案です。
これらを積み上げていくことも、国債の安定に寄与するのではないかと思います。もちろん、財政健全化の旗は決して下ろしてはいけないし、デフレに戻ってもいけません。そうなれば日本への信用は失われ、危機は一気に高まることを忘れてはいけません。
「金利ある世界」における使命
――ここからは金融機関の事業環境について伺います。好調な決算の理由をどう分析していますか?
中島 昨年3月、日銀がマイナス金利政策を解除し、事業環境が良くなったことが大きいのは間違いありません。金利が付くことで収益性も上がり、ビジネスチャンスも増えました。また、円安で利益がかさ上げされているところもありますし、株価が上がる中で、政策保有株式の売却益も利益に乗っています。
――「金利ある世界」では、どんなビジネスが求められますか?
中島 金利が付いたことで、日本経済は「失われた30年」と呼ばれた長い停滞期を終え、再び成長に向けて歩み始めました。いま、金融機関の最も大きな使命は、日本の再成長に貢献していくことです。半導体の工場やデータセンターなどをはじめ、多額の設備投資が求められる中、我々がしっかりとリスクを取ってファイナンスを付けなければなりません。企業の成長を手助けしながら、グループ全体にも利益となって戻ってくる。そんな好循環を生み出したいと思っています。
また、大企業が元気になり、M&Aなどが活発になったことで、ビジネスチャンスも増えてきました。当社は3メガバンクの中で、大企業取引が最も弱かったのですが、成長が期待できる分野に経営資源を投入したことで、昨年度は貸金残高が約10%増加。他の銀行と比べても、圧倒的な伸び率でした。
本記事の全文(約7000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2025年9月号に掲載されています(中島達「国債格下げに気を付けろ」)。全文では下記の内容をご覧いただけます。
ジャパン・プレミアム復活も
“韓国の二の舞”は避けろ
国債投資を増やしていく
「金利ある世界」における使命
技術的な優位性は揺らがない
デジタル富裕層を囲い込む
トップバンクを目指して
出典元
【文藝春秋 目次】大座談会 保阪正康 新浪剛史 楠木建 麻田雅文 千々和泰明/日本のいちばん長い日/芥川賞発表/日枝久 独占告白10時間/中島達「国債格下げに気を付けろ」
2025年9月号
2025年8月8日 発売
1800円(税込)
