ファッションデザイナーの芦田多恵氏と、宇宙飛行士の山崎直子氏。片や女性の多い職場で、片や女性の少ない環境で活躍してきた2人が、お互いのキャリアを振り返りつつ、女性が力を発揮できる社会について語り合った。

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日焼け止めは入れた?

 山崎 大先輩の向井千秋さんが日本人女性として初めて宇宙飛行士に選抜されたのが、まさに1985年、男女雇用機会均等法制定の年でした。

 芦田 山崎さんは、向井さんに次ぐ日本人女性2人目の宇宙飛行士だったんですよね。当時、大きな注目を集めました。

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 山崎 世界には宇宙滞在を経験した宇宙飛行士が約700人いて、うち女性は10%強です。近年は宇宙飛行士が男女半々になりつつあります。

山崎直子氏(左)と芦田多恵氏 Ⓒ文藝春秋

 芦田 隔世の感がありますね。

 山崎 かつてJAXAの宇宙飛行士の募集には「理系分野の四大卒」という条件がありました。理系分野に進学する女性が少ないため、応募資格を持つ女性の数は限られていました。しかし、幅広い分野の経験者を募ろうと、2021年からは「学歴不問」としたんですよ。

 芦田 文系のかたにも門戸が開かれたんですね。

 山崎 とはいえ、日本以外では理系出身という条件を残す国がいまも多くて、世界的に女性の宇宙飛行士は少ないのが現状です。

 芦田 女性が、体力的にも精神的にも男性と同じ訓練をこなすのは大変なことでしょう。

芦田氏がデザインした宇宙服 Ⓒ文藝春秋

 山崎 宇宙飛行士が受ける訓練や宇宙でのミッションに男女の差はほとんどありません。たしかに体力的なハンディはありますが、そこは工夫次第でなんとかなります。

 印象的だったのが、アメリカで行われたチームビルディング訓練でのことです。大自然の中での過酷な訓練ですから、持っていける装備はテントなど必要最小限です。ところがインストラクターの女性が、「日焼け止めは入れた? カンカン照りのもとで、むやみに日焼けする必要はないから」と言ってくれたんです。私は「えっ、いいの?」と驚いてしまって。「男性はそういうことをわざわざ言わないから、自分の身は自分で守りなさい」とアドバイスしてくれたんです。そうか、男性がしないことを我慢する必要はない、自分で解決すればいいと学びました。