ママが宇宙に行けなくなる
芦田 弊社では1994年に、青少年の育成を目的とした「芦田基金」を創設し、2019年には「輝く女性研究者賞」を設けました。優れた研究を行う女性研究者やその活躍を推進する機関を表彰しています。いつかこの賞の名称から「女性」が省かれるくらい、女性研究者が増えたらと願っていますが……。
山崎 共感いたします。
芦田 表彰式で研究者のかたとお話しする機会があるんです。悩みはみなさん同じで、いかに仕事と家庭を両立するかでもっとも苦労されています。私も大いに共感しました。
山崎 理系に限らず、永遠の課題ですよね。
芦田 私も育児と仕事のどちらを優先するか、常に選択を迫られていた気がします。たとえば、ファッションショーの当日に娘が高熱を出して、けいれんを起こしてしまって。夫が急いで娘を病院に連れて行ってくれましたが、ショーは私がいないと何も進まないので、心を鬼にして現場へ向かったこともありました。
山崎さんも2人の娘さんを育てられていますから、そういう場面がたくさんおありだったでしょう。
山崎 大事な試験の前に限って娘が高熱を出して、看病しながら必死に勉強したことがありました。宇宙に飛び立つ何週間か前にも高熱を出したことがあります。濡れたタオルを持っていくと、「あっち行って」と怒られて……。「風邪がうつったらママが宇宙に行けなくなる」と。
芦田 やはり子どもにとって母の存在は大きいですよね。そうなると自然と女性の負担は大きくなりがちです。子ども達が幼かった頃、私の頭の中ではつねに四層ぐらいのスケジュールが重なっていました。上の子、下の子、仕事、家のこと、とすべてが同時に進行していたんです。
山崎 そうそう、マルチでないと片付きません。会議中に少しでも時間があると、「今日買うものは卵と納豆、牛乳」とメモしたり(笑)。
芦田 のんびり外出することもままならなくて、美容院へ行くのが精いっぱい。先ほどの女性研究者たちも研究成果を上げるために海外の学会に参加したくても、子どもを抱えたままでは到底無理でした。しかし、コロナ以降、オンラインで学会へ参加できるようになったそうです。「これは私たちにとって大きな前進です」とうかがって、世界は少しずつ動き始めていると感じました。
※本記事の全文(約7000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(芦田多恵×山崎直子「女性は心を鬼にして職場へ向かう」)。全文では下記の内容をお読みいただけます。
・昇進のチャンスがあっても
・お弁当作り、夫婦、バイアス
・ミリタリー出身と民間出身
出典元
【文藝春秋 目次】大座談会 保阪正康 新浪剛史 楠木建 麻田雅文 千々和泰明/日本のいちばん長い日/芥川賞発表/日枝久 独占告白10時間/中島達「国債格下げに気を付けろ」
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