中国では自動運転のタクシーやバスの開発が進んでいる。今回、訪中したベテランジャーナリストの井上久男氏が、その内実を探った。
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「もはや人間が運転するよりも安全なのかもしれない」
トヨタやホンダ、日産自動車といった日本の自動車メーカーも拠点を置く中国・広州市の空の玄関「白雲国際空港」に降り立つ。前回レポートした深圳から150kmほど離れているが、ここでもロボットタクシーに乗ることができる。事前にスマートフォンのアプリで予約しておけば、空港の指定場所にロボットタクシーが待機している。
経済特区の深圳と違って広州市内は規制があるため、無人ではなく安全員の同乗が義務付けられている。とはいえ、実際の運行に人間は関与していないので、深圳で乗ったロボタクと技術的には同水準だろう。白雲国際空港で営業許可を受けているのは、小馬智行(ポニーai)だ。同社は自動運転技術を開発し、ロボタク事業などを運営する企業で、広州市内だけで約300台が稼動しているという。
ポニーは2016年に米シリコンバレーで創業し、2017年に中国に本社を移した。自動運転関連技術では米グーグル系のウェイモと並ぶ、世界のトップ企業だと言われる。創業者でCEOを務めるジェームズ・ペン氏は、中国の百度やグーグルで技術者として計11年間働いた。2024年には米ナスダック証券市場への上場も果たしている。社員は約1300人で、うち7割が研究開発人材だという。
ポニーは日本との関係も深い。2020年にトヨタが4億ドル(約592億円)を出資し、2024年にはロボタク運営の合弁会社を設立している。白雲国際空港にいたロボタクの車体はトヨタのミニバン「シエナ」をベースにしたものだった。トヨタが車両を開発し、ポニーが自動運転に関するソフトウェアの開発やデータ収集を行っているのだ。
