「一般論としてのリスク」とは異なり、「この会社にとって何がリスクなのか」は、外部の人間にはなかなか見えづらい。その企業の事業内容に精通している人だからこそ見えることはあり、同じ情報でも違った見方ができます。

インテリジェンス人材の育成

 新浪 とはいえ、悩ましいのは、どんな人材を配置すればよいのか。

 鈴木 いきなり社内から適任の人材を見つけるのは至難の業ですね。

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 新浪 ですから、外部から経験豊富で有能な人材に来てもらうしかなかった。

 鈴木 「インテリジェンス推進本部」のトップに起用された元・北米三菱商事ワシントン事務所長の江口豪氏は、まさに適任でしたね。

 新浪 商社は、民間企業のなかでも日頃からインテリジェンスに精通することが求められる業種で、なかでも江口氏の豊富な経験に惹かれました。

 鈴木 「インテリジェンス推進本部」では、具体的にどんな活動を行なっているのですか。

インテリジェンスの専門部署を置いたサントリーHDでは、トランプ大統領が相互関税を発表する前に対策を打てたという Ⓒロイター=共同

 新浪 インテリジェンスと言っても、「007」のようなスパイ活動を行なうわけではありません(笑)。“極秘の裏情報”を取ることが目的ではない。むしろ公開情報を地道に収集し、情報の一つ一つを結合させながら分析することが大事です。

 もう一つ大事なのは「人に会う」こと。何といっても米国の動向を把握することが重要ですから、東京だけでなくワシントンにも事務所を設置して、シンクタンクや米政権の中枢にいた人物や現幹部とネットワークを築き、そこから日常的に情報を収集するように努めています。

この続きでは、インテリジェンス推進本部について新浪剛史氏がさらに語っています》

※本文の全文(約8500字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2025年9月号に掲載されています(新浪剛史×鈴木一人「『地経学』経営のすすめ」)。全文では、下記の内容をお読みいただけます。

 

・「地経学研究所」の狙い
・「インテリジェンス部門」の設置
・インテリジェンス人材の育成
・情報の収集だけでなく共有が大事
・中国のカードの方が強かった
・米中以外の国とも
・今後も続く米国の孤立主義
・AI覇権を握るのは米か中か
・台湾有事への備え

出典元

文藝春秋

【文藝春秋 目次】大座談会 保阪正康 新浪剛史 楠木建 麻田雅文 千々和泰明/日本のいちばん長い日/芥川賞発表/日枝久 独占告白10時間/中島達「国債格下げに気を付けろ」

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