日本を動かす官僚の街・霞が関から“マル秘”情報をお伝えする『文藝春秋』の名物コラム「霞が関コンフィデンシャル」。最新号から、ダイジェストで紹介します。
◆◆◆
試される牛若丸
トランプ関税の猛威が日本企業を襲っている。3月10日、対日関税の引き上げを回避するため、ハワード・ラトニック米商務長官と会談した武藤容治経産相。だが、「例外は認めない」と突き放され、その後、全輸入車に25%の関税を課すことも発表された。
対米交渉の最前線に立つのは荒井勝喜通商政策局長(平成3年、旧通産省入省)だ。2月の石破茂首相とドナルド・トランプ大統領の会談では、外務省の河邉賢裕総合外交政策局長(同)らと共に様々なシナリオ作りの中心を担った荒井氏。その後も関税問題を巡り、「首相とは週に複数回、1、2時間かけてみっちり議論。米側とも密に連絡を取り、様々な布石を打ってきた」(官邸幹部)という。
だが、その一方で不安が広がっているのが産業界だ。「企業への情報提供があまりに乏しい」(大手電機首脳)、「米国の関税政策が修正される見込みがないなら、はっきりそう伝えてほしい」(機械メーカー幹部)と愚痴がこぼれる。
どの業界も高関税が長期化する見通しなら、現地生産へ切り替えなければならないから切実だ。日本が例外にならなければ、「経産省に批判が向かうかもしれない」(経団連幹部)という。
荒井氏の政策立案能力や指示の素早さ、与野党の人脈には定評がある。「負けず嫌いだし粘り強い。ぎりぎりまで打開策を探しているはず」(局長経験者)とみられるが、相手はトランプ大統領だ。楽観できる材料は少ない。
フットワークの軽さから「経産省の牛若丸」の異名を取った荒井氏は、省内でも胸中を明かそうとしない。「米側の対応は流動的で、確定的なことが言えないのは致し方ない」(前出・官邸幹部)が、産業界からは「もっと丁寧に企業側と意思疎通して、対米投資の判断材料を示してほしい」(有力財界人)と注文が付く。《記事の続きでは、対米交渉のキーマンについて、さらに言及しています》
※本記事の全文(約5500字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2025年5月号に掲載されています(霞が関コンフィデンシャル)。
■連載「霞が関コンフィデンシャル」
【2024年】
6月号 令和のモーレツ官僚、脱原発の知恵袋、準キャリアのエース、サイバー新組織の陣容
7月号 官僚たちの選挙戦、「改革派」の真価、処分を克服できるか、新御用掛の安定感
8月号 政権を去る「恐竜」、波紋を呼んだ中企庁長官、新・プリンスの実力、オールジャパンの真価
9月号 処分を逃れた「巨悪」、財務次官の系譜、女性検事総長への嘆息、長官レースの号砲
10月号 新秘書官の本命候補、「脱・警察」となるか、「イトウ違い」の裏側、旧自治省の“復権”
11月号 新総理との距離感、原発再稼働の勝負所、少子化対策のキーマン、高専出身次官の力量
12月号 不安漂う首相秘書官、首相肝いりの官房副長官、間合いを詰めた金融庁、相次ぐ県警不祥事
【2025年】
1月号 「壁」を巡る同期の攻防、「岸田議連」の火種、元首相秘書官に“赤紙”、1年延期の新次官
2月号 野党対策の黒子たち、官邸に漂う閉塞感、総務官邸官僚の実力、次期警察人事の行方
3月号 経産省が込める“実弾”、新次官と首相の距離、財務相を支える女性たち、インサイダーの“余波”
4月号 財務省の“切り札”、森山印の次官レース、日米会談の余波、燃え盛る厚労省
5月号 今回はこちら
