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★処分を逃れた「巨悪」
防衛省が揺れている。海上自衛隊の護衛艦で特定秘密の違法な取り扱いが判明したのをはじめ、潜水手当の不正受給や不正飲食、川崎重工業からの接待漬けなどが次々と明らかになり、「想像以上に規律が緩んでいる」(自民党国防族)との危機感が広がる。
実力組織たる自衛隊を民主的統制下に置くことは戦後一貫した課題だ。「文官統制」を担うのが「背広組」や「内局」と呼ばれる防衛官僚である。
その内局でここ数カ月、内部調査が進められてきた。元陸上自衛官の性被害告発をきっかけに全自衛官対象の特別防衛監察を実施したことで、「制服組」と呼ばれる幹部自衛官から「背広組のハラスメントは放置するのか」との声が上がったためだ。続々と出てくる証言に、「この夏の幹部人事で、上層部は一新されるのでは」(省幹部)と囁かれてきた。
だが、蓋を開けてみれば、パワハラ認定されたのはたったの3人。この内、事前の予想通りに懲戒処分を受けて更迭されたのが茂木陽前報道官(平成5年、旧防衛庁入庁)だ。処分理由は「広範な部署に対して日常的に威圧的な言動を繰り返し」たこと。筆頭局とされる防衛政策局勤務が長く、調査課長時代には安保法制などのレクで永田町からも重宝され、「将来の次官」と目された。
しかし、国家安全保障局に出向した頃から「キレて、部下を一方的に詰める傾向に歯止めが掛からなくなった」(省関係者)。上司から再三にわたって注意を受けながら、行状を改めなかったことも重く見られた。
一方で、今回の処分には、背広・制服組の双方から「まだ巨悪が眠っている」と不満が噴出している。逃げおおせた筆頭格は、7月の人事で官房長から防衛審議官に就任した中嶋浩一郎氏(元年、同)。菅・岸田両政権で首相秘書官に就任すると、権力を笠に着たかのように省内外に向け「テメエ!」、「バカヤロウ!」と厳しい叱責を連発。厳正な処分は必至とみられたが、あろうことか次官級ポストに昇格した。事情を知る向きは、「まさか不問とは……」と、開いた口が塞がらぬ様子だ。次官の道はほぼ閉ざされたが、防衛省が押さえる内閣官房副長官補に転じる可能性は残した。
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