この告発は、ジャニー喜多川氏の性加害が社会問題化する直前の2023年2月から行われた。加害者は住所不定無職の50代で、精神障害者。男児・女児問わず子どもを誘拐する常習者だった。そして、事件の深刻な影響は、事件のずっと後になってから、“時限爆弾”のように表れた――。性暴力の実情を長年取材するジャーナリストの秋山千佳氏による徹底取材。(後編はこちら)
「されたことの意味がよくわからなかった」
東京都内の地下鉄駅前の喧騒から数分歩くと、ふいに人気がなくなった。
夏の太陽が西へ傾き、マンションに囲まれた狭い道路も公園も、そして公園の角にある古い公衆トイレも、影に覆われてしんとしている。
「32年前のあの時も、こんな感じでした」
赤池雄介(仮名、41)はそう言って、夕暮れ時の空を見やった。
あの時とは、赤池がこの場所で、性被害に遭った瞬間を指す。
「性暴力を受けなければ障害者にならなかったと思うと、犯人を許せません」
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