フジテレビ系「ぽかぽか」（1月21日放送）のマナー講座が変だと、SNSで批判が起こりました。私自身が注目したのは、べつに問題のない言い方をことさら取り上げ、目上に失礼であるかのように扱っていたところです。視聴者の恐怖心をあおっています。私は「決めつけの印象を受ける」と指摘しました。

　私の発言について、『週刊文春』2月6日号で能町みね子さんが触れてくださいました。その上で、最近はマナーを過剰に気にする例が多いとして、あるアナウンサーの一言を挙げました。

　1月24日のフジテレビ系「めざまし8」でのこと。目下ガバナンスを問われているフジテレビの社員向け説明会について、若手の女性アナウンサーがこう感想を述べたといいます。〈私自身、〔入社〕3年目という立場で、恐れながら申し上げると、不安でしかない説明会だったなというふうに思いました〉

　能町さんは、この〈恐れながら申し上げると〉に疑問を呈します。〈自社の上層部に、ここまで大仰にへりくだらなきゃいけないのか〉〈長幼の序や古めかしい男女のマナー〔中略〕にストイックになりすぎて過剰なことになっている〉

　私は能町さんの意見に賛成です。この社会には「これこれの言い方は失礼だ」「僭越（せんえつ）なことを言ってはいけない」と脅しをかけ、また、その標的になることを恐れる雰囲気があります。でも、場合によっては、それを失礼と考えるべきではない、僭越と捉えるべきではない状況も少なくありません。

　アナウンサーが自らの所属する放送局の問題点を指摘することは、メディアの一員として当然で、そこに〈恐れながら申し上げると〉とへりくだった要素を含ませることは、たしかに不要です。能町さんの批評眼に敬服します。

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