日産“鈍感力”社長にいら立つホンダ“暴れ馬”社長

特集 日の丸企業のチャレンジ

井上 久男 ジャーナリスト
ビジネス 経済 企業

世界3位の経営統合なるか――「日産の役員人事にホンダが介入すべき」との声も

 東京都内の会議場で、演壇中央にホンダの三部(みべ)敏宏社長、向かって左に日産自動車の内田誠社長、右に三菱自動車の加藤隆雄社長が並んだ。2024年12月23日17時、ホンダと日産が共同持ち株会社設立に向けて交渉に入ることを発表した。

 持ち株会社の下にホンダと日産がぶら下がり、両ブランドは残ることが示された。持ち株会社の取締役の過半数と社長をホンダが指名することから、経営統合はホンダ主導で進められる。日産が筆頭株主の三菱は、この経営統合スキームに加わろうが加わるまいが、両社との協業を続ける意向だ。

 ホンダと日産の経営統合が成立すれば、日本の自動車産業史上、最大の統合劇となる。両社に三菱を加えた23年度のグローバル販売台数は約837万台。トヨタ自動車、独フォルクスワーゲンに次ぐ世界3位の連合が誕生することになる。

会見で並んだ日産、ホンダ、三菱の3社長 Ⓒ時事通信社

「エネルギー、コミュニケーション、モビリティ(移動手段)の在り方が大きく変わったことで、クルマの知能化、電動化が進んでいる。この三つの領域は過去の産業革命でも大きく変わった」

 会見冒頭、ホンダの三部氏がこう切り出した。自動車産業の在り方が急速に変化を迫られ、三部氏はそれを産業革命に匹敵する動きと捉えているのだ。21年4月の社長就任会見でも三部氏は「これからは経営のスピードが重要。そのためには外部の知見とアライアンスの活用についても躊躇なく判断していく」と語っている。荒波の中を生き抜くために、ホンダが貫いてきた「単独主義」と決別する覚悟を決めたのだ。

 18世紀に英国で起きた産業革命は、生産手段を人力から蒸気機関に変えた。そして第二次産業革命を経て、20世紀初めにモビリティは馬車からエンジンを積んだ自動車にシフト。20世紀末の第三次産業革命ではインターネットが登場し、自動車とネットが融合する時代になった。現在は第四次産業革命の時代に入り、人工知能(AI)の登場によるデジタル革命が起きている。自動車も有人の自動運転から無人運転のロボットカーにシフトしていく。そうなれば、モビリティを提供するのは、大手自動車メーカーだけとは限らない。新興勢力も必ず参入してくる。その危機感のもと、ホンダは日産との経営統合を目指したのだ。

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source : 文藝春秋 2025年3月号

genre : ビジネス 経済 企業