深層レポート 天皇が漏らされた“ご懸念”

高市政権と皇室典範

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「今になって急に議論が進んでいるようですが、率直に申し上げて『何を今更』という気持ちです。皇族数が減り、皇室が先細っていくことへの懸念は、今に始まったことではありません。悠仁親王殿下を支える皇族数を増やすために制度を変えるなら、親王殿下がお生まれになった時に変えられたのではありませんか」

 ある皇族は、周囲にこう戸惑いを漏らしておられるという。現在大詰めを迎えている、皇室典範改正をめぐる与野党協議のことだ。

 話し合われているのは、現在16方(うち男性皇族は5方)となった皇族数の減少を食い止めるための方策だ。皇位継承順位第2位で、次世代の天皇である秋篠宮家の長男、悠仁さま(19)は、皇室最年少。即位なさる頃には、お支えする皇族数が激減していることが懸念される。さらに、悠仁さまのお子さまとして男子が生まれなければ、次の世代の皇位継承者が不在となる事態も想定されるのだ。

次世代の天皇である悠仁さま Ⓒ時事通信社

 皇室典範改正が検討されているのは、そんな事態を避けるためだ。具体的には、(1)女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持する案と、(2)旧宮家の男系男子を養子として皇室に迎える案の2案について協議が進む。保守派を自任する高市早苗首相は、7月17日までの今国会での皇室典範改正に意欲を示してきた。

 皇族数確保の議論という建前を保ちつつも、この2案の源流にあるのは、「女系天皇に道を開くか、男系継承を堅持するのか」という、皇位継承をめぐるきわめて重い二者択一だ。女性皇族が結婚後も皇室に残れるようにした場合、将来的にはその子ども(女系)に皇位継承権を与えるか否かの議論に発展する余地がある。一方、旧皇族の男系男子が皇室に復帰し、その子ども(男子)に皇位継承権が与えられれば、皇位の男系継承は維持されることになる。

 女系容認か、男系堅持か。この議論をめぐっては、平成の時代から天皇家と保守派との間で、長きにわたる攻防があった。そして現在、皇室の思いとはかけ離れた形で決着の時を迎えようとしている。

 このままでは皇統の危機に陥る――。その事実が政府に突き付けられたのは、2016年、上皇の「退位のご意向」が契機だった。

“一蹴”された旧皇族復帰案

 上皇が退位すれば、天皇家は一世代若返る。だが、その次の世代には、男子は悠仁さましかおられない。その事実は、なかなか重い腰を上げなかった政府をようやく動かした。17年、生前退位を可能にする皇室典範特例法が成立。この特例法の附帯決議に、政府が「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等について」検討することが盛り込まれた。

 安定的な皇位継承。これは、上皇が最も呻吟なさってきた課題だ。上皇の相談相手を務める人物は、本誌記者にこう語ったことがある。

「悠仁さまはもちろん天皇になられるが、“愛子天皇”の制度上の可能性をなんらかの形で残しておかなければ、今後の皇室の存続は難しいのではないか」

 そして、こんな懸念も口にした。

「旧皇族の復帰を実現してしまったら、象徴天皇制はなくなってしまう」

 旧皇族の復帰は、養子案という形で、まさに現在議論されている検討課題の一つだ。なぜ上皇周辺は否定的だったのか。

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source : 文藝春秋 2026年7月号

genre : ニュース 政治 皇室