首都直下地震とタワマン

関東大震災100年のリアルなシナリオ

鎌田 浩毅 京都大学名誉教授・京都大学レジリエンス実践ユニット特任教授
ニュース 社会 サイエンス

巨大「火災旋風」、地盤の液状化、高層ビル大揺れ……「最悪の事態」に備えよ

 9月1日は大正12(1923)年に関東大震災が起きてから100年に当たる。最近の日本列島では地震が頻発し、不安が広がっている。最大の懸念は日本の総人口の約3分の1にあたる一都三県3800万人が暮らす首都圏を襲う巨大地震である。

 国と東京都は「首都直下地震」と名付けて市民に万全の防災体制を整えるように呼びかけている。一方、首都直下地震がどこでいつ、どのように発生するかについてはよく理解されていない。その理由は、地震を起こす「震源域」が首都圏の19カ所に広がり、それによって予想される災害も多岐にわたるからである。

 本稿では首都直下地震の仕組みを含む全容、その想定される被害と対策、特に首都圏に林立する高層ビルやタワーマンションの安全性をどう確保するかについて解説する。

鎌田氏

第1章 首都圏はロシアン・ルーレットの上にある

 第1章では、首都直下地震が地下で起きるメカニズムと震源の基本的理解を目指す。それらを正しく知ることによって今後取るべき対策が明確になるからである。

 そもそも地震は地下深くでプレートと呼ばれる厚い岩板が激しく動くことによって起きる。首都圏の下には3枚のプレートがひしめき合っており、世界的にも地震の起きやすい変動帯にある(図1-1)。

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source : 文藝春秋 2023年10月号

genre : ニュース 社会 サイエンス