『日本沈没』は1973年3月に光文社カッパ・ノベルスからリリースされた長編書下ろし小説であり、今年、50周年を迎えました。
出版当時は上下巻で385万部という大ベストセラーとなり(現在までの累計490万部)、同じ年に漫画、ラジオドラマ、劇場映画と、メディアミックスの先駆けともなりました。
私は小松左京の次男で、父の没後、小松左京作品の管理をし、遺品資料の分析や作品解説なども手がけています。
『日本沈没』は50周年ですが、奇しくも今年は、関東大震災から100年にあたります。小松左京の母、私にとっての祖母は、実は、関東大震災で被災していました。
父は、1997年の講演「災害・防災の“ビジョン”を描く」で、次のように語っています。
〈私の母は19歳のときに、日本橋の人形町であの関東大震災に遭いました。それでしょうがないんで八王子の親戚のところまで2日間歩いて行った。母の覚えているのは、もうとにかくあっちに火、こっちに火で火事が一番怖いという話と、それから、歩いて行く途中の沿道の人たちの炊き出し、いろいろなものを持っていきなさいという、あの温かさが忘れられないと。でも、恐ろしいですよと言っていたんです。〉
祖母は、大阪に移り住んでからも、関東大震災のことを決して忘れることなく、枕元には、避難する際に足を守るため足袋を用意し、防火のために、常に瓶(かめ)に水をためていました。そして、機会はいくらでもあったにもかかわらず、二度と故郷である関東の地を踏もうとしませんでした。
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source : 文藝春秋 2023年6月号