SF小説の巨匠が日本人に伝えたかったこと
片山 私は小学生のときから小松左京を愛読してきて、2015年、上梓した『見果てぬ日本』(新潮社)ではついに小松左京論も書いてしまいました。ですから、今日は小松さんを間近でご覧になってきた、ご子息にお会いできることを心待ちにしてきました。
小松 恐縮です。私は会社に勤めながら、小松左京の所蔵資料を整理し、小松作品の魅力を少しでも世の中に伝えようと活動を続けてきました。作家でも評論家でもありませんので、片山さんのように小松作品を深く読み込んでくださっている方を前にすると緊張してしまいます。
片山 いやいや、外から勝手なことを申しているだけでして畏れ入ります。お伺いしたいことはやまほどあるのですが、その中でも特にはやはり『日本沈没』のことです。日本列島が火山噴火、大地震、大津波に次々と襲われ、その根本理由は複数のプレートの関係する大規模地殻変動で、ついに日本全体が沈没してしまう。そのような国難に対して、日本人が英知を結集して、脱出計画を進めるというSF大作です。1973年に刊行されて、460万部を超える大ベストセラーになり、同年の年末に映画も公開され、800万人以上を動員する超弩級の大ヒットとなりました。
当時、10歳だった私は書籍の発売後すぐに近所の書店に駆け込んで、上下2冊を求めて読破し、映画公開時には初日に駆けつけました。
その後も『日本沈没』は不朽の名作SFとして、読み継がれていきました。2006年には樋口真嗣監督によって、再び映画化もされ、大ヒットを記録しました。また、1995年の阪神淡路大震災、2011年の東日本大震災など、日本が大きな天災に見舞われるたびに、日本人の未来への指針を与える書物として、手に取られてきました。
今年の夏には、電子書籍として『日本沈没 決定版』(文藝春秋)が刊行され、若い世代にもよく読まれているそうです。電子書籍版の『日本沈没』には、小松実盛さんが非常に充実した解説を寄稿されていて、この作品に小松左京がどんな思いを込めていたのかをより深く理解することができました。
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source : 文藝春秋 2017年11月号