甲冑姿にゴム長靴の装いで、数々の選挙に立候補した羽柴誠三秀吉(1949〜2015、本名・三上誠三)。青森で企業グループを経営し、城や国会議事堂を模したホテルを建てたことでも知られる。父の素顔を次男の三上大和氏が語る。
怒りだすと手がつけられない人でした。父が亡くなった後、税務署の担当者が菓子折りを持って訪ねてきました。税務署員が手土産? と驚いていたら、父を「羽柴さん」と呼ぶ。聞けば、生前に「三上さん」と本名で呼びかけ、父にブチ切れられたそうです。さらに手ぶらでは会ってもらえなかったと。よほど怖かったのでしょうね。
家庭でも、父がいると空気がピリピリしました。幼い頃、僕が泣きやまないと、父は腹を立ててトラの檻まで引きずっていきました。家で生きたトラを飼っていたのです。檻に顔を押しつけられた瞬間、死ぬと思いました(笑)。

父が初めて選挙に立候補したのは1978年、青森県金木町(現・五所川原市)の町長選でした。まだ20代で、本名で立候補しています。
そもそも金木町長をめざしたのは、青函トンネルの工事で、地元の土木関係者から締め出されたことが関係したかもしれません。
貧しい農家に育った父は、中学を卒業すると製材工場で働きました。職を変えながら蓄えて21歳でダンプカーを1台買い、生コン業者に石材を運んで納入する仕事をはじめます。ダンプと仲間を増やすうちに、青函トンネル工事の運送業務を受注しました。個人の運送業者が飛び込み営業で大プロジェクトの仕事を受注したのです。当然、地元の会社はおもしろくありません。父は青森県内で運搬する石材を売ってもらえなくなり、秋田県まで買いにいったそうです。父には、その時の恨みがあったので、町長となって見返してやろうと思ったのかもしれません。
その後、東京都知事選、大阪府知事選、長野県知事選、衆院選とエスカレートしていった理由は不明です。父は仕事や選挙について家族には語りませんでした。余計なことを言うと怒りだすから、僕たちも尋ねませんでした。
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