マニアと老人

鈴木 慶一 ミュージシャン
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 ムーンライダーズは今年、デビュー50周年を迎えた。恐ろしい数字だ。オリジナルメンバーの平均年齢は70歳をゆうに越える。これほど長く続けるとは、夢にも思わなかった。

 1976年に発売された「火の玉ボーイ」というアルバムは、元々私のソロ作品の予定だった。ところが、レコード会社の意向で、気づくと「鈴木慶一とムーンライダー()」名義となっていた。私も私で、特に文句を言わなかった。これが我々のデビューだ。半世紀の歴史は極めてぼんやりとスタートを切った。ヒットとも縁がない。ただ、看板となる代表曲がないことを逆手にとって、イメージに縛られず、自由に活動してきた。常に曖昧さを内包しつつ変容してきた特殊なバンドだと、私も思う。

 現在は、4年ぶりの新しいアルバムを製作している。レコーディング中は暗中模索で、常に不安が付きまとうが、深い霧が晴れるように「あ、これはいける」と視界が開けるタイミングが訪れる。いつか来る瞬間のために、様々な音を試して、棄てて、拾う作業を繰り返す。50年経っても変わらないプロセスだ。

鈴木慶一氏(本人提供)

 6人編成だったバンドメンバーのうち、すでに2人が世を去った。2013年にドラムのかしぶち哲郎君、2023年にはキーボードの岡田徹君が亡くなった。かしぶち君の作る曲は、退廃的でロマンティックだった。岡田君はど真ん中の「ムーンライダーズらしい」サウンドを支えてくれた。レコーディング中、ふとした瞬間に、2人の不在を感じる。何かが足りない、と思うとそれは彼らの音だったりする。ただ、穴は非常に大きいけれど、ことさら埋めようとも考えていない。代わりは誰にもできない。ならば曖昧なままにしておいて、新しい何かが流れ込み、違う形ができればそれでいい。

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source : 文藝春秋 2026年4月号

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