布施健「国民の期待は検察にあり」

堀田 力 弁護士・元東京地検特捜部検事

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政権与党の最大実力者で前首相の田中角栄逮捕にまで発展したロッキード事件。この戦後最大の疑獄事件を捜査指揮したのが、布施健(ふせたけし)検事総長(1912―1988)だ。戦前にゾルゲ事件捜査に携わり、戦後は下山事件で主任検事を務めた。ロッキード事件発覚後、アメリカに渡って証拠資料を受け取り、関係者の嘱託尋問を実現した元東京地検特捜部検事で弁護士の堀田力(ほったつとむ)氏が、その人となりを振り返る。

 

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 34年前の昭和51(1976)年2月5日朝、海の向こうからビッグニュースが飛び込んできた。アメリカ議会でロッキード社のコーチャン社長が証言し、自社のジャンボ機を全日空に売り込むための工作資金として、児玉誉士夫に約21億円を渡したと明言したのだ。さらに、丸紅役員の署名がある5億円の「ピーナツ領収書」が示され、コーチャン社長はその5億円は日本の政府高官に渡ったとも証言した。

 政府高官とは一体誰なのか――。

 日本のマスコミや国会は蜂の巣を突いたような騒ぎになった。翌6日には、三木武夫総理が「日本政府の名誉にかけて真相を究明する」と大見得を切り、16日と17日には国会で全日空と丸紅幹部の証人喚問が行われた。日本での捜査着手を求める声は日増しに高まっていたが、この間、法務省や検察庁は事態の推移を見守るしかなかった。

ロッキード事件をめぐる裁判に出廷する田中角栄 ©文藝春秋

 肝心の証拠はすべてアメリカ側にあり、国会の証人喚問でも「記憶にございません」の連発で、どうやって捜査を進めるか見当もつかなかったからだ。通常であれば、事件の端緒を自ら掴んで隠密に捜査を行う東京地検特捜部も慎重な姿勢を崩さなかった。

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source : 文藝春秋 2010年3月号

genre : ニュース 政治