「囲碁・将棋の世界に名人がいるように、政治の天才はまぎれもなく角栄だ」
竹下登元首相をしてそう言わしめたのが田中角栄さんです。私にとって田中番記者として言葉を失う直前まで肉声を聞けたことは記者冥利に尽きる経験でした。
角栄ブームは繰り返し押し寄せる波のように周期的にやって来ます。総理に就任した石破茂氏は、尊敬する師として角栄さんの名前をあげています。

最初の角栄ブームが起こったのは、『日本列島改造論』を刊行した頃。この本を刊行した翌月、1972(昭和47)年7月の自民党総裁選で勝ち、54歳で総理にのぼりつめた。新潟の雪深い農村で生まれ、最終学歴は尋常高等小学校卒業で、1934年に15歳で単身上京。文字通り岩に爪を立てるように人生を歩んで天下をとった角栄さんは、豊臣秀吉になぞらえて「今太閤」と呼ばれました。
政権発足時の内閣支持率は、朝日新聞の世論調査で63%。ところが、頂点を極めた後の政治家人生は暗転したのです。ロッキード事件で金権政治家の権化のように語られ、自民党最大派閥の旧田中派を率いて、日本の政治全体を支配する影響力を行使したことで「闇将軍」や「キングメーカー」などと批判されました。
私が田中番記者になったのは1984年、ロッキード裁判の一審判決直後。その頃、角栄さんは若い記者全員を赤坂の料亭に呼んだことがありました。いつも玄関の外で立って待っているだけの記者を料亭の中に入れて、こう言ったんです。
「いいか、日本の政治はこういうところで動いているんだ。二度目にここに来れるかどうかは、君たちの才覚次第だ」
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