「さらば日本電産! 私は台湾で戦う」

関 潤 鴻海科技グループCSO
ビジネス 国際 企業

かつての日産のエースが日本を出た理由(聞き手・構成・井上久男)

関潤氏 ©時事通信社

 昨年9月に日本電産社長を辞任しましたが、61歳という年齢にかかわらず、様々な企業からお誘いをいただき、ありがたかったです。ただ、提示していただいたポジションと、自分のやりたいことがなかなかマッチせずに悩んでいました。

 転職先を選ぶ基準には、2つの大きな柱を考えていました。

 1つ目は、世の中への貢献度が大きい仕事。なるべく多くの人のためになる、インパクトがある仕事がしたかった。その意味では、地球規模で貢献できるEV(電気自動車)事業も、選択肢の1つでした。

 2つ目は、「攻め」の仕事ができること。売り上げ・収益の両面で、アグレッシブに成長を目指す仕事をやってみたいという気持ちがありました。例えば在籍していた日産での最後の仕事がカルロス・ゴーン氏の拡大戦略を軌道修正するために工場閉鎖するなどの構造改革でした。そうした「守り」の仕事が苦手なわけではないけれど、面白さという点では「攻め」の仕事にはかなわない。

 そうして考えあぐねていた時、鴻海からEV事業の話を持ち掛けられたのです。最初にコンタクトがあったのが昨年の10月末でしたが、非常に積極的で、あっという間に話が進んだ。1週間後には「ぜひ台湾に来てみてくれ」と、本社に招かれました。本社ではEV事業について、どんな計画があって、現時点でどこまで進んでいるのか、包み隠さず説明を受けた。劉揚偉会長も直接、自身のビジョンや夢を語ってくれ、私の目を見て「一緒にやろうよ」と……その熱量に心を打たれました。

 他社からのお誘いも同時並行で進んでいたため、そこでは「少し考えさせてください」と返事をしたものの、やはりEV事業の話が頭から離れることはなかった。最終的に、お引き受けすることになりました。

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source : 文藝春秋 2023年4月号

genre : ビジネス 国際 企業