「これはね、人生で初めてつかんだ大金でした」
午前6時半、東京・葛飾区の自宅を出ると、すでに夏の日差しが眩しかった。毎日の通勤に使っているのは、警視庁が用意した覆面パトカーだ。私は後部座席に身を沈めると、いつもの習慣で読売新聞に目を通した。2002年8月7日付の朝刊。もちろん、最初に読むのは三面記事だ。ある見出しに目が留まった。
〈マブチモーター社長宅事件 殺害直後に放火か〉
私は食い入るように活字を追った。8月5日の夕方、千葉県松戸市の電気機器大手「マブチモーター」社長宅で火災が発生、焼け跡から2人の遺体が発見されていた。千葉県警は司法解剖と現場検証の結果、この事件を「放火殺人」と断定したようだ。記事によると犯人は家人を絞殺直後に、油を撒いて火を放った可能性が高いという。残忍極まりない手口だ。
「居合わせた被害者を皆殺しにし、そのうえ放火までしたのは、証拠隠滅のためかもな。“練馬の事件”を思い出すな……」
私の頭をよぎったのは、ある痩せた男の顔だった。
「まさか、な……」
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source : 文藝春秋 2019年6月号