「心が辛いときこそ整えます」岩下志麻85歳のマイ体操

岩下 志麻 女優

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夫が亡くなったあとも欠かさなかった

 私の日常は、いくつもの生活習慣でできています。なかでも目覚めた瞬間から眠りに落ちる直前まで取り入れているのが、体操です。

 主に行うのは、太極拳、気功、ストレッチ体操の三つ。いずれも汗を流すような激しい運動ではありませんが、健康を保つために欠かせないものです。

 昨年3月に58年連れ添った夫の篠田正浩(映画監督)を亡くし、悲しい日々ですが、運動習慣は何とか崩さないように努力しています。私の行う体操は、心が苦しい時に浅くなりがちな呼吸を整えてくれます。それに体を動かせば、少しでも食べようという気が湧いてきますから。

 体と心は繋がっている。85歳の今、そう実感するばかりです。

岩下志麻氏(本人提供)

 太極拳と出会ったのは20年ほど前、60代の頃でした。

 家族旅行で北京へ行った時、朝早くに皆で散歩をしていると、太極拳をやっているグループが目にとまりました。

「なんてゆっくりした動きの運動なのだろう」というのが第一印象。不思議と惹きつけられて、見入ってしまった。体に良さそうだし、仲間に入ったら気持ちいいだろうなという思いが残りました。

北京の公園で太極拳をする市民 Ⓒ時事通信社

 帰国後すぐ、太極拳を教えてもらえるジムを探し出し、週1回通うようになりました。私はいいなと思う情報を得たら即行動に移し、習慣に落とし込むタイプなんです。

 やってみると、動きがゆっくりになればなるほど重心のコントロールが難しくて、きつい。片足立ちするにしても、すっと立つのは簡単にできるけど、時間をかけて片足を上げていくのは大変ですよね。

 続けるうちに体幹が鍛えられて、体力もついたと感じます。

 10年ほど経った頃、ドラマのお仕事でご一緒した米倉涼子さんから「岩下さん、いつも姿勢がいいですけど、何かされているんですか?」と尋ねられました。自覚はなかったのですが、撮影の休憩中も私の背筋が伸びているというのです。

 太極拳を続けているせいかしら?とお伝えしたところ、ぜひ連れていってほしいと言われまして。通っているジムに「友人を連れてきていいですか」と許可を得て、1日だけのお試しにお連れしました。

 米倉さんはファッショナブルな衣装で参加されました。お若くて体を鍛えておられるし、レッスンを終えてお茶をした時に余裕のありそうな表情だったので「物足りなかったかな」と思っていました。ところが、後日のインタビュー記事で「翌日は筋肉痛になった」とおっしゃっていたそうでビックリしました。

 太極拳は簡単そうに見えるかもしれませんが、奥が深い。出合えてよかったなと思っています。

太極拳から気功へ

 太極拳は中国の伝統武術ですが、同じように中国発祥で呼吸法やゆっくりした動作を重んじる健康法が、気功です。

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source : 文藝春秋 2026年7月号

genre : ライフ 芸能 スポーツ ヘルス