永守重信、稲盛になれなかった男

井上 久男 ジャーナリスト

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創業者は最後まで部下を信じなかった

 粉飾決算や品質不正問題が相次ぎ発覚しているモーター大手のニデックが6月18日、京都市内のホテルで定時株主総会を開いた。1973年の創業以来、経営トップに君臨してきた永守重信氏(81)は、昨年12月に代表取締役グローバルグループ代表を辞任。初めて「カリスマ」不在の総会となった。粉飾決算の影響を受けて、ニデックは2026年3月期の決算をいまだに発表できていない。株主に業績の説明ができない異例の総会となった。

 総会の冒頭、議長を務める岸田光哉社長兼最高経営責任者(CEO)が一連の不祥事を陳謝した。

「会計不正問題により決算報告ができないことに加え、品質に関しての不適切行為の疑いが判明したことに深くお詫び申し上げます」

 株主からは永守氏に関する質問が続いた。「永守氏には裏切られた。直接説明が聞きたい」「私は永守さんのファンなので直接声が聞こえないのは残念」「無配になったことは、株主の責任ではない。永守氏からは人間として一言欲しい」「これまで永守氏の話を聞くためにここに来ていたが、来ないのならライブ中継で十分だ」など、怒りや失望が寄せられた。

永守元名誉会長は株主総会に出席しなかった Ⓒ時事通信社

 まずは、粉飾決算と品質不正問題について概要を振り返っておく。粉飾決算については、調査していた第三者委員会が今年3月3日に公表した調査報告書で、適正な減損処理をしなかったことなどによって純資産への負の影響が1397億円にも上ると試算している。

 減損処理などを適正に行わずに滞留した資産を、ニデック社内では「負の遺産」と呼んでいた。そして各事業部門やグループ会社は、永守氏から課せられた高い業績目標を達成しながら「負の遺産」を処理することを「セルフファンディング」と称していた。ニデックでは2016年末頃から永守氏承認の下で「負の遺産」を処理する「資産健全化プロジェクト」も始まった。

 しかし、プロジェクトの過程で「セルフファンディング」をしても、高い業績目標は維持せねばならないため、また不正に手を染め、新たな「負の遺産」が生じるケースもあった。ニデックでは、営業利益を引き上げる具体策がない場合でも営業利益目標を積み上げた。社内で「白箱を積む」と呼んでいた行為だ。

永守氏直轄の「特命監査部長」

 ニデック本社や関連企業では2011年頃から約9年間にわたって「特命監査部長」が存在していた。永守氏によって任命された専門知識を持つ社員A氏が、会計不正などを調べていた。調査結果は、永守氏をはじめ、創業以来の側近である小部博志氏(今年3月3日付で会長を辞任)、永守氏以上に現場に業績目標達成の圧力をかけたとされる北尾宜久副社長(同前)ら限られた幹部のみに報告され、内部監査部門や監査法人とは情報共有しなかった。規模の大きな会計不正が見つかると、高い業績目標に影響しないよう段階的に処理し、その実態を永守氏も把握していた。

 こうした状況から、非現実的な目標を掲げる永守氏が不正会計を一部容認し、関わっていた実態が浮かび上がる。調査報告書は「今般発覚した会計不正について最も責めを負うべきなのは、永守氏であると言わざるを得ない」と断じている。

 品質不正疑惑は、粉飾決算の発覚で東京証券取引所がニデックを「特別注意銘柄」に指定したことを受け、昨年10月30日付で発足した「ニデック再生委員会」の品質ワーキンググループの調査で判明した。顧客と取り決めた部材、工程、設計などを、顧客の同意を得ずに変更した不適切な行為が1000件以上見つかった、と今年5月13日に発表。外部の弁護士で構成される調査委員会を発足させた。

 この品質不正も粉飾決算と同様、過度な業績達成圧力が影響していると見られる。筆者は2021年にニデック役員(当時)から、こんな話を打ち明けられたことがある。

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約7,500字の本稿では、下記の内容をレポートしています。 ■株主総会の質問者数は昨年の3倍に ■経営理念が書かれた社内の貼り紙は剥がされた ■「京セラより高い本社ビルを」という目標 ■永守氏が「神輿として担がれない理由」 ■「私は基本的には人を信用していない」

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source : 文藝春秋 2026年8月号

genre : ビジネス 経済 企業 働き方