ニデックの会計不正に関する調査報告書が、第三者委員会から発表された。この報告書の内容を、「ニデック永守代表の落日」(文藝春秋2026年1月号)を執筆したジャーナリスト・井上久男氏が解説する。表沙汰にされない“裏の監査”を担っていたとされる「特命監査部長A氏」とは、何者だったのか?
「特命監査部長」が誕生した理由
第三者委員会の調査結果を受けてニデックは3月3日、減損処理を検討すべき資産が約2500億円あるため、追加で減損損失を計上する可能性があると発表した。
創業者の永守重信氏はどのように会計不正に関与していたのか。同委員会の調査報告書には、端的に示す事例が記されていた。
それが「特命監査部長A氏」なる人物の存在だ。
ニデックでは組織体制上、経営管理監査部が監査を担当している。ただし、この部署が担当するのはあくまでも「表の監査」であり、「裏の監査」は特命監査部長の肩書を持つA氏(2022年退職)がたった一人で担っていた。A氏は経営管理監査部に所属していたが、部内の誰からも指示を受けず、報告も求められなかった。日常的に彼とやり取りをするのは、トップの永守氏のみだったからだ。

A氏はもともと勤務していた会社が2007年にニデックに買収され、ニデックの子会社に転籍となった。「組織に馴染もうとしないが、監査能力は高い」との社内評が永守氏の耳に入ると、永守氏は2011年2月にA氏をニデック本社に引きあげ、会計不正や横領・着服などの特命調査を担当させることにした。「特命監査部長」の肩書を与えたのも永守氏本人だ。その理由について、永守氏は第三者委員会のヒアリングに対して、こう答えている。
「日本や中国、その他のアジア拠点の役職員から不正を告発する投書が自分宛に直接届くことがしばしばあり、それらの事案を調査する人材としてA氏を登用した」
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