原爆はどれだけのものを奪うのか。『原爆供養塔』著者の衝撃ノンフィクション
一瞬にして7万人以上が行方不明、と聞いて、私たちはどんな現場を想像するだろうか。ある者は瞬時に蒸発し、ある者は階段の影となり、ある者は放射線に貫かれ、骨格を留めぬまで焼き尽くされた。
広島への原爆投下である。昭和20(1945)年だけで14万人(±1万人)が死亡、そのうち約7万人が引き取り手のない遺骨となって、今も平和記念公園に安置されている。死者を語るにあまりに乱暴な数字は、人間を人間として数えることすら許さぬ核被害の本質を示している。

パンドラの箱を開けた人類は、使いきれぬほどの核兵器を製造してきた。その数1万数千発。核保有国はボタンひとつで敵を殲滅できる誘惑にかられながらも、複数の国際条約によって抑制を効かせてきた。だが今、そのほとんどが効力を失っている。重要な柱であるNPT(核兵器不拡散条約)はこの10年余、合意形成すらできず、核兵器を管理する枠組みは壊れかけている。
それでも過去81年の長きにわたり、核兵器は一度も使われていない。なぜか。「核の傘」とか「拡大抑止」とか軍事上の理屈はいくつも立つが、もっとも重い抑止力、それは紛れもなく広島と長崎の人々が味わった尊厳なき死である。
この物語は、爆心で全滅した一家の3世代にわたる記憶をひも解くものだ。数字でひとまとめに語られる死者ひとりひとりに、無残に断ち切られた人生があり、家族がいた。
核兵器を都市の上空で炸裂させたら、町に、人間に、いったい何が起きるのか。遠い記憶を辿り直すことは、とりもなおさず私たちの近未来を想像することなのかもしれない。
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